研究概要 |
夜行性のマウスは日内明暗サイクルの暗期に活動・摂食し,明期に休眠・絶食する。食餌栄養素の変化に応答して摂食,代謝等の日周リズムを制御する液性因子の同定を目的に,各種栄養組成食摂餌条件化における血中ホルモン等の日周リズムの変動を調べた。マウスを12時間:12時間の明暗サイクル(点灯時をZeitgeber Time ZTO時,消灯時をZT12時と称する),各種食餌[通常食(25%タンパク質),高タンパク質食(60%ミルクカゼインあるいは大豆タンパク質),無タンパク質食]の自由摂食条件下にて1週間飼育後,4時間ごと(ZT3,7,11,15,19,23時)に各3匹のマウスから採血し,血漿中の液成因子の濃度を測定した。いずれの食餌においても,plasminogen activator inhibitor-1(PAI-1)は明期から暗期への移行期にピークを示す明瞭な日周リズムを示した。インスリン濃度は通常食および高タンパク質食において暗期に上昇する傾向を示した。グルカゴン濃度は高大豆タンパク質食において暗期に上昇するリズムを示した。レプチン濃度は,通常食では明期後期,高大豆タンパク質食では暗期前半にピークを有するリズムを示した。グレリンおよびglucose-dependent insulinotropic polypeptide(GIP)濃度は無タンパク質食において全般に顕著に上昇し,リズム性を示した。また,無タンパク質食においてはインスリン,グルカゴン,レプチンは全般に顕著に減少した。これら食餌栄養素に応答して変動を示した液性因子は,アミノ酸による摂食行動や中間代謝の変化を媒介する因子の候補と見なすことができ,今後その可能性の検討を行う。
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今後の研究の推進方策 |
今後,食餌条件として絶食,高脂肪食,低タンパク質食(15%ミルクカゼインあるいは大豆タンパク質)等についても,液性因子の日周リズムに及ぼす効果を検討する。あわせて,肝臓における3大栄養素の中間代謝系の酵素,調節因子等の日周発現リズムの変動との相関を明らかにし,それらを媒介しうる液性因子を同定する。
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