研究課題
1.高タンパク質食による肝臓の日周遺伝子発現リズムの変動: 夜行性のマウスの肝臓において,摂食期(暗期)には脂肪合成が亢進し,絶食期(明期)にはグルコース合成(糖新生)が亢進する。一方,アミノ酸分解とそれに伴う尿素合成は,摂食期と絶食期の双方において亢進すると考えられる。我々は,尿素合成系に加え糖新生系の酵素遺伝子群も高タンパク質食の摂食期に活性化され,さらにグルカゴンの血中レベルが上昇することを明らかにした。今回,そのシグナル伝達系の解析を行った。12:12明暗サイクル[点灯時をZeitgeber Time (ZT) 0時,消灯時をZT12時とする]のもと,C57BL/6雄マウスに,高タンパク質食を1週間自由摂食させ,4時間毎に肝臓を採取し,ウェスタン法により各種タンパク質レベルの日周リズムの変化を,低タンパク質食群を対照として検討した。その結果,転写調節因子FoxO1のタンパク質レベルが高タンパク質食の摂食期に上昇することが明らかになった。2.セクレトグラニンII遺伝子(Scg2)ノックアウト(KO)マウスにおける光同調性の解析: 我々が世界に先駆けて作成したScg KOマウスは恒明条件下で概日行動リズムの周期延長を示す。今回,12:12明暗サイクルの明期あるいは暗期の始点を6時間前方あるいは後方に変位させる合計4種類の明暗サイクル位相変位において,マウス行動リズム位相の明暗サイクル位相への再同調に要する日数について遺伝子型間の比較を行ったところ,暗期始点の6時間前方変位において,Scg2 KOマウスは所用日数が短縮する傾向を示した。また,暗期ZT14,16,18,20,22時のいずれかに350ルクス,15分間の光パルス照射を行い,以後恒暗条件下で飼育し,行動開始時点の照射前後における位相変位を照射時点に対してプロットした位相反応曲線を作成したところ, 暗期後半の照射による位相前進がScg2 KOマウスで亢進しているとの予備的知見を得た。
2: おおむね順調に進展している
肝臓における糖新生系酵素等の日周遺伝子発現リズムの高タンパク質食による変動を媒介する因子の解析を進め,グルカゴンに応答し糖新生系酵素遺伝子を活性化することが知られている転写調節因子FoxO1のタンパク質レベルが,高タンパク質食群において低タンパク質食群に比べ摂食期に上昇することを明らかにした。また,我々が世界に先駆けて作成し,恒明条件下で概日行動リズムの周期延長を示すことを明らかにしたScg2 KOマウスにおいて,行動リズム位相の明暗サイクル位相変位への再同調や暗期後半の光パルス照射による位相前進が亢進しているとの予備的知見を得るなど,研究はおおむね順調に進展しているものと判断した。
1.高タンパク質食による肝臓の日周遺伝子発現リズムの変動を媒介するシグナル伝達系の解析: これまでに,高タンパク質食の摂食期にグルカゴンの血中レベルが上昇し,肝臓においてグルカゴンの作用を媒介し糖新生系酵素遺伝子を活性化する転写調節因子FoxO1のタンパク質レベルが上昇することを示した。今後,FoxO1遺伝子を活性化する転写調節因子CREB(全タンパク質およびリン酸化型)や,オルニチンサイクル酵素遺伝子群を活性化する転写調節因子C/EBPファミリー構成員の変動を調べる。C57BL/6雄マウスに,高タンパク質食を1週間自由摂食させる。ZT 3,7,11,15,19,23時に肝臓を採取し,ウェスタン法により各タンパク質レベルの日周リズムの変化を,低タンパク質食群を対照として検討する。2.Scg2 KOマウスにおける行動リズムの食物(摂食時間帯)同調性の検討: 概日リズム,日周リズムの光応答性が亢進していると考えられるScg2 KOマウスにおいて,行動リズムの摂食時間帯応答性を調べ,亢進あるいは低下が見られるかを解析する。Scg2 KOマウスおよび対照群マウスを12:12明暗サイクル,通常食自由摂食下にて2週間飼育後,明期4時間ZT4-8時のみ,あるいは暗期4時間 ZT16-20時のみの時間制限給餌を2週間行う。また,12:12明暗サイクル2週間の後,恒暗あるいは恒明条件にて2週間飼育し,さらに4時間のみの時間制限給餌を2週間行う。いずれの場合も給餌に先立つ食物予知行動の出現時期,量について遺伝子型間の差異を調べる。一方,25年度の成果として得られた明暗サイクル位相変位への再同調や光パルス照射による位相変位に関する予備的知見についての確認を行う。
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Journal of Neurochemistry
巻: 128 ページ: 233-245
10.1111/jnc.12467
PLoS ONE
巻: 8 ページ: e79236
10.1371/journal.pone.0079236