研究課題/領域番号 |
23390050
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
椛 秀人 高知大学, 教育研究部医療学系, 教授 (50136371)
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研究分担者 |
奥谷 文乃 高知大学, 教育研究部医療学系, 准教授 (10194490)
谷口 睦男 高知大学, 教育研究部医療学系, 助教 (10304677)
村田 芳博 高知大学, 教育研究部医療学系, 助教 (40377031)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 匂い / 学習 / 副嗅球 / 主嗅球 / 僧帽細胞 / 顆粒細胞 / タンパク質合成 / アセチル化ヒストン |
研究概要 |
雌マウスに形成される交配雄フェロモンの記憶は妊娠の維持に不可欠である。このフェロモン記憶は、鋤鼻系の最初の中継部位である副嗅球に生じるシナプスの可塑的変化によって支えられている。交尾刺激により遊離されたノルアドレナリンやオキシトシンの働きを引き金として、新たに合成されたタンパク質を含め、種々の情報分子が関わり、僧帽細胞から顆粒細胞への興奮性シナプスに超微形態学的変化が生じることを示してきた。また、この記憶の電気生理学的相関としてのシナプス伝達効率の長期増強(LTP)も示してきた。今回、このLTPのタンパク質合成依存性について検討した。副嗅球スライス標本を用いて、外側嗅索を100 Hz、1秒間のテタヌス刺激を3分間隔で4回反復すると、僧帽細胞から顆粒細胞への興奮性シナプスにLTPが誘導される。このとき、テタヌス30分前からテタヌス後60分間、タンパク質合成阻害薬anisomycin(20μM)を投与すると、LTPの初期相は影響を受けず、後期相が選択的に抑制された。この結果は、フェロモン記憶形成の感受性期の後半にanisomycinを副嗅球に投与すると、記憶障害がもたらされるとの行動学的知見と一致しており、LTPを解析することによってフェロモン記憶のメカニズムが検討できることを示唆している。 新生ラットにおいて、匂いと電撃の対提示により成立する匂いの嫌悪学習は、主嗅球の僧帽細胞と顆粒細胞の相反性シナプスが深く関わり、転写因子CREBの発現とそのリン酸化を介して成立する。昨年度、行動薬理学的手法及び生化学的手法を用いてCREBの下流にクロマチンを構成するヒストンのアセチル化が関わることを明らかにした。今年度は主嗅球の僧帽細胞から顆粒細胞への興奮性シナプスにおけるLTP誘導をヒストン脱アセチル化酵素阻害薬trichostatin Aが促進することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
副嗅球のバゾプレッシンの社会的認知機能における役割に関する解析を次年度に繰り越したものの、交付申請書に従って副嗅球の僧帽細胞から顆粒細胞へのシナプスに誘導されるLTPの後期相にタンパク質合成が関わること、新生ラットの匂い学習におけるヒストンのアセチル化の関与を電気生理学的に明らかにすることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
副嗅球の僧帽細胞から顆粒細胞への興奮性シナプス伝達に誘導されるLTPの後期相にタンパク質合成が関わることが明らかになったので、次はその記憶機構を支えるキナーゼを特定したいと考えている。また、副嗅球の僧帽細胞から顆粒細胞へのシナプス伝達にバゾプレッシンがどのような役割を果たすか検討する予定である。
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