研究概要 |
概日時計のリズム発振は受精卵や初期胚には見られず、胎生期に形成されることが知られているが、概日時計の発生メカニズムについては、現在までほとんど分かっていない。 最近、我々は、ES細胞を用いた独自に開発した解析法により、概日時計の発生は、細胞ひとつひとつのレベルで自律的にプログラムされていることを、世界で初めて明らかにした(Yagita et al,PNAS,2010)。しかし、一方で胎生期の影響が、出生後の概日リズムの乱れなどにつながるという報告もあり、生体レベルでの概日時計の発生を理解するには、「細胞レベルの内在性プログラム」と「環境要因」の関係も含めた統合的研究が必須になる。本計画では、概日時計の発生メカニズムを、マウス胚を用いた発生工学とイメージング技術を駆使して、細胞レベルから個体レベルまで一貫した解析系を用いて、統合的に理解することを目的としている。 23年度は、遺伝子変異ES細胞バンクを用いて、概日時計の周期決定メカニズムを担う鍵分子の探索を行った。まず、コントロール実験として,変異によって周期異常が出現することが分かっている遺伝子変異ES細胞をin vitroで分化誘導し,形成される概日時計の振動を解析した。その結果,これまでノックアウトマウスで報告されている周期異常と同様の変化を示すことが明らかになった。さらに、他の遺伝子変異ES細胞でも検討したところ,いくつかの遺伝子の変異でES細胞の分化誘導によって形成される概日リズム周期が異常になることを見いだした。
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