研究課題/領域番号 |
23390052
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
尾仲 達史 自治医科大学, 医学部, 教授 (90177254)
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研究分担者 |
高柳 友紀 自治医科大学, 医学部, 助教 (10418890)
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キーワード | 摂食 / 社会行動 / オキシトシン / PrRP |
研究概要 |
肥満すると社会的な行動が減少し、逆に、社会的に孤立すると肥満し易くなるという肥満と社会的孤立の悪循環が疫学的に示されている。一方、肥満と社会的孤立は共に、ヒトの寿命を短くすることも知られている。本研究の目的はこの肥満と社会行動の相互作用の神経基盤を明らかにすることである。 23年度は、摂食時と社会行動時において活性化されるオキシトシン産生ニューロンを同定し、PrRP産生ニューロン活性化との因果関係を明らかにすることを目的とした。 摂食させると視床下部のオキシトシン産生ニューロンが活性化された。明期に摂食させても、暗期に摂食させてもオキシトシン産生ニューロンの活性化が観察された。これに対し社会的刺激をくわえると、視床下部とともに分界条床核のオキシトシン産生ニューロンが活性化された。さらに、プロラクチン放出ペプチド(PrRP)遺伝子欠損動物においては、摂食によるオキシトシン産生ニューロンの活性化が減弱されていた。このデータは、摂食による視床下部オキシトシン産生ニューロンの活性化にPrRPが必須であることを示している。また、オキシトシン受容体遺伝子欠損動物においてPrRP遺伝子欠損動物と同様に一回の摂食量が増加していた。これらのデータは、摂食により少なくとも一部はPrRP産生ニューロンの活性化を介し視床下部オキシトシン産生ニューロンが活性化され、オキシトシンは摂食を終了させるシグナルとして働いていることを示唆している。 また、時間空間選択的にオキシトシン産生ニューロンを破壊するための遺伝子改変ラットのラインを確立させるために、外来性に組み込んだ遺伝子の産物であるジフテリアトキシン毒素受容体に対する特異抗体を作成することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
摂食あるいは社会行動により活性化されるオキシトシン産生ニューロンの同定に成功し、さらに摂食に関してはその上流がPrRP産生ニューロンであることを示唆するデータを得た。また、摂食に関し、PrRP遺伝子欠損動物と同様のフェノタイプをオキシトシン受容体遺伝欠損動物において見出した。さらに、時間空間選択的にオキシトシン産生ニューロンを破壊するための遺伝子改変ラットのラインを確立させるために、特異抗体を作成することに成功しており着実に成果を上げている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、時間空間選択的にオキシトシン産生ニューロンを破壊するための遺伝子改変ラットのラインを確立させ、この動物を用いた実験を進めていく。 さらに、セロトニン産生ニューロンの研究についても実験を進めていく予定である。
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