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2012 年度 実績報告書

心房細動発生における活性酸素種の役割の解析と新規治療法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 23390053
研究機関千葉大学

研究代表者

中谷 晴昭  千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60113594)

研究期間 (年度) 2011-04-01 – 2014-03-31
キーワード活性酸素種 / 老化 / 心房細動 / アップストリームアプローチ / Mn-SODマウス
研究概要

加齢に伴い心房細動の罹患率が高まり、心筋細胞の老化の背景には活性酸素種(ROS)による機能障害が関与するとされるが、ROSがどのような電気生理学的異常を引き起こすかは不明である。本研究では、老化によって発生率が高まる心房細動の発生機序としてROSの慢性的負荷に着目し、心筋・骨格筋特異的Mn-SOD欠損マウス(H/M-SOD-/-)を用い、その病態生理学的解析を行い、抗酸化作用物質の慢性投与の影響を観察し、予防的治療手段の確立の一助とすることを目的とした。前年度検討したマウス(11-17週齢)より若い週齢マウス8-11週齢の野生型(WT)およびH/M-SOD-/-マウスから心臓を摘出し、酸素化した栄養液で灌流したランゲンドルフ心において心房頻回バースト刺激による心房細動の発生率および有効不応期(ERP)の測定を行った。WT心臓に比してH/M-SOD-/-心臓ではERPは有意に延長していたが、心房細動発生率高には差異が認められなかった。酵素的に心房筋細胞を単離し、パッチクランプ法を適用し、カレントクランプモードで活動電位記録、ボルテージクランプモードで膜電流を測定した。H/M-SOD-/-心房筋細胞では活動電位幅(APD90)はWT心房筋細胞のAPD90より有意に延長していた。抗酸化作用を持つリンゴポリフェノール(AP 0.1%)を含有する飲料水の長期間投与では、WT心房筋細胞APD90には影響を与えなかったが、H/M-SOD-/-心房筋細胞のAPD90延長は若干減弱させた。H/M-SOD-/-心房筋細胞の外向きK+電流密度はWT心房筋細胞のそれより、減少していた。このように、ROSの慢性負荷により心房筋細胞では外向きK+電流密度が低下し、活動電位幅の延長が認められることが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

研究協力者の平成23年度中の所属研究機関異動により、一時的に遺伝子改変動物、すなわち心筋・骨格筋特異的Mn-SOD欠損マウスの供給が滞った影響は平成24年度の研究計画にも若干影響を残し、やや遅れている状況である。より若い週齢(8-11週齢)の野生型および心筋・骨格筋特異的Mn-SOD欠損マウスの摘出ランゲンドルフ心を用いたin vitro実験を行ったところ、実績報告書に示されているように、平成23年度に行った比較的週齢の高いマウスを用いた場合と異なる結果が得られた。単離心房筋細胞を用い、パッチクランプ法による活動電位記録、膜電流記録は一部実験を行って、平成23年度の結果の実験例数を増やすことができ、その心筋・骨格筋特異的Mn-SOD欠損マウス心房筋細胞における活動電位幅延長という実験事実を確固たるものすることが出来た。また、その活動電位幅延長の原因の一つとして、外向きK+電流密度が減少しているという実験成績を得られたものの、L型Ca2+電流密度に関する影響については、細胞内外液中にCs+が含まれていなかったことからK+電流変化の影響を除外することが出来ず、活動電位幅変化に寄与する可能性のあるL型Ca2+電流密度の変化については、再度検討する必要があると思われた。

今後の研究の推進方策

若い週齢において野生型と筋・骨格筋特異的Mn-SOD欠損マウスにおいては、有効不応期の延長は認められたものの、心房細動誘発率に有意な変化が認められなかった。そこで、再び15週齢前後の野生型と筋・骨格筋特異的Mn-SOD欠損マウス摘出心で、心房細動発生率に差異が認められるか、そしてリンゴポリフェノール(AP 0.1%)を含有する飲料水による長期投与によって影響を受けるかについて、検討を行う。また、酵素的に単離した単一心房筋細胞を用いたパッチクランプ法によってカレントクランプモードによる活動電位記録および膜電流記録を行い、野生型および筋・骨格筋特異的Mn-SOD欠損マウス心房筋細胞において活動電位幅および膜電流系密度の変化について検討を行うと共に、種々のイオンチャネル遺伝子発現変化の有無についても検討を行う予定である。

  • 研究成果

    (14件)

すべて 2012 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 5件) 図書 (3件)

  • [雑誌論文] Apple polyphenols regulate mitochondrial superoxide generation and extend survival in a mouse model of dilated cardiomyopathy.2012

    • 著者名/発表者名
      Sunagawa T
    • 雑誌名

      Int J Life Sci Med Res

      巻: 2 ページ: 46-51

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The nitric oxide reductase of enterohaemorrhagic Escherichia coli plays an important role for the survival within macrophages.2012

    • 著者名/発表者名
      Shimizu T
    • 雑誌名

      Mol Microbiol.

      巻: 85 ページ: 492-512.

    • DOI

      doi: 10.1111/j.1365-2958.2012.08122.x. Epub 2012 Jun 21

    • 査読あり
  • [学会発表] イヌ心房ペーシングモデルにおける選択的KAChチャネル遮断薬NTC-801の抗心房細動効果:IcおよびIII 群薬との比較2012

    • 著者名/発表者名
      山本 渉
    • 学会等名
      第29回日本心電学会学術集会
    • 発表場所
      幕張メッセ(千葉)
    • 年月日
      20121012-20121013
  • [学会発表] ミトコンドリアCa2+ 活性化K+ チャネル活性化を介したendocannabinoidの心筋保護作用2012

    • 著者名/発表者名
      西田洋文
    • 学会等名
      第29回日本心電学会学術集会
    • 発表場所
      幕張メッセ(千葉)
    • 年月日
      20121012-20121013
  • [学会発表] Oxytocinの心筋保護機構におけるATP感受性K+ チャネルの役割2012

    • 著者名/発表者名
      西田洋文
    • 学会等名
      第29回日本心電学会学術集会
    • 発表場所
      幕張メッセ(千葉)
    • 年月日
      20121012-20121013
  • [学会発表] 病態解明における機能研究の重要性とその先に見えるもの

    • 著者名/発表者名
      中谷晴昭
    • 学会等名
      第60回循環力学研究会
    • 発表場所
      東京
    • 招待講演
  • [学会発表] 心房細動の薬物療法の現状と未来

    • 著者名/発表者名
      中谷晴昭
    • 学会等名
      トランスレーショナルセミナーIN DOKKYO
    • 発表場所
      独協医科大学(栃木)
    • 招待講演
  • [学会発表] 心房細動薬物療法の現状と未来:アップストリームアプローチの重要性

    • 著者名/発表者名
      中谷晴昭
    • 学会等名
      第2回BUNGO AF Forum
    • 発表場所
      レンブラントホテル大分(大分)
    • 招待講演
  • [学会発表] アミオダロン注の電気薬理学的特性

    • 著者名/発表者名
      中谷晴昭
    • 学会等名
      第17回アミオダロン研究会
    • 発表場所
      イイノホール(東京)
    • 招待講演
  • [学会発表] Basic research on Nicorandil: history and its future

    • 著者名/発表者名
      中谷晴昭
    • 学会等名
      第25回ニコランジル研究会
    • 発表場所
      経団連会館(東京)
    • 招待講演
  • [学会発表] 細胞内寄生体Toxoplasma gondiiによる心臓障害の解析

    • 著者名/発表者名
      石川 敬
    • 学会等名
      第82回日本寄生虫学会
    • 発表場所
      東京医科歯科大学(東京)
  • [図書] 実験薬理学 実践治療薬2012

    • 著者名/発表者名
      中谷晴昭
    • 総ページ数
      372 (191-200)
    • 出版者
      ㈱金芳堂
  • [図書] 不整脈学 Cardiac Arrhythmia2012

    • 著者名/発表者名
      中谷晴昭
    • 総ページ数
      614 (21-24)
    • 出版者
      南江堂
  • [図書] そうだったのか!臨床に役立つ不整脈の基礎2012

    • 著者名/発表者名
      中谷晴昭
    • 総ページ数
      199 (50-67、107-128)
    • 出版者
      メディカル・サイエンス・インターナショナル

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公開日: 2014-07-24  

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