研究課題
本実験計画では、糖尿病を含むインスリン抵抗性状態において幹細胞障害が合併するという仮説を検証することを目的として、第一年次に樹立した幹細胞活性レポーターiPS細胞株を用いた幹細胞機能評価を行った。その結果、培養条件下におけるインスリン抵抗性惹起因子IL-1beta附置により幹細胞増殖能の低下が生じたが、TNF-alpha附置では有意な変化は認められなかった。次に、このiPS細胞を健常および糖尿病カニクイザル個体へ生体内移植することにより、糖尿病病態因子によるin vivoでの影響評価を実施する準備を進めた。生体内移植実験では移植免疫を回避するために、主要組織適合性抗原(MHC)ホモ個体由来細胞より樹立したiPS細胞を、同一MHCホモあるいはヘテロ個体(レシピエント)に移植する。MHCホモカニクイザル個体由来の皮膚繊維芽細胞にSOX2、KLF4、OCT4、NANOGの4因子を導入し、iPS細胞樹立に成功した。一方、MHCホモ個体は1頭しか存在しないため、同個体より採取した精液を用い、人工繁殖によって同一MHCをヘテロに有するレシピエント個体の作出を試みた。通常のカニクイザル雌個体より腹腔鏡下に卵子を採取し、人工授精によって2細胞への卵割を確認後、仮親子宮への胚移植を実施した。その結果、妊娠成立個体を少数確認することができたが、すべて死産したためにMHCヘテロ個体を作出するには至らなかった。従って、レシピエント個体を用いた糖尿病モデル作出計画・経費は次年度に繰り越した。更に、iPS細胞から誘導した脂肪細胞分化過程の解析により、GPR120以外にGPR43の発現レベルが有意に変動することを見出した。脂肪細胞におけるGPR43機能についてはマウス脂肪細胞を用いた解析の結果、インスリン代謝作用に対して抑制的作用を有することが判明した。
3: やや遅れている
幹細胞活性レポーターiPS細胞を健常および糖尿病カニクイザル個体へ生体内移植することにより、糖尿病病態因子によるin vivoでの影響評価実施の準備ができていることが本年度の目標の1つであった。iPS細胞生体内移植実験では、移植免疫を回避するために主要組織適合性抗原(MHC)ホモ個体由来細胞より樹立したiPS細胞を、同一MHCホモあるいはヘテロ個体(レシピエント)に移植する。MHCホモカニクイザル個体由来の皮膚繊維芽細胞にSOX2、KLF4、OCT4、NANOGの4因子を導入し、iPS細胞樹立に成功した。一方、MHCホモ個体は1頭しか存在しないため、同個体より採取した精液を用い、人工繁殖によって同一MHCをヘテロに有するレシピエント個体の作出を試みた。通常のカニクイザル雌個体より腹腔鏡下に卵子を採取し、人工授精によって2細胞への卵割を確認後、仮親子宮への胚移植を実施した。その結果、妊娠成立個体を少数確認することができたが、すべて死産したためにMHCヘテロ個体を作出するには至らなかった。従って、レシピエント個体を用いた糖尿病モデル作出計画・経費は次年度に繰り越した。
移植免疫寛容カニクイザル個体の作出によるiPS細胞移植の代替法として、細胞移植用免疫隔離カプセルの開発を進める。これまでに膵ベータ細胞移植等に用いられてきた実績があり免疫隔離能の信頼性は高いが、市販されていないため自作する必要がある。免疫隔離機能はポリエチレンテレフタレート多孔性メンブレンに依存しており、液性成分は通過できるが細胞成分は通過できない性質を利用する。移植用iPS細胞は多孔性メンブレン上に接着させ、カプセル内に封入する。密閉したカプセルを背側肩甲骨下部の皮下ポケットへ移植した後、一定期間後に再切開してカプセルごと細胞を回収する。実際にカニクイザルに生体内移植するまでに、ラット等を用いた移植試験により、封入細胞数や至適移植期間を決定する必要がある。
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Nat Commun.
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