研究課題
自己免疫性心筋炎モデルにおける炎症の発症メカニズムの解析を行った。自己免疫性心筋炎は、雄性Balb/cマウスにミオシン重鎖ペプチドを2回免疫することで発症させた。まず、心筋炎の発症時期に、心筋組織内でIL-17の発現が増強することを明らかにした。さらに、IL-17の発現増強に伴ってTh17細胞の分化に必須の転写因子であるRORγtの発現上昇を認めたことから、自己免疫性心筋炎の心筋組織にTh17細胞が浸潤していることが示唆された。そこで、心筋炎組織から浸潤している炎症細胞を単離し、FACS解析を行った。その結果、浸潤細胞中にIL-17+/CD4+細胞が存在することが明らかとなった。Th17細胞がnaive T細胞から分化する過程において、IL-6が必須であることが知られている。そこで、IL-6受容体阻害抗体の心筋炎に対する作用を検討した。その結果、IL-6受容体抗体を免疫前に投与した場合には、自己免疫性心筋炎の発症が抑制されるとともに、RORγtの発現誘導が抑制されたが、免疫後にIL-6受容体抗体を投与しても抑制効果は認められなかった。さらに、RORγtノックアウトマウスは、自己免疫性心筋炎の発症に対し抵抗性を示すことが示された。以上のことから、自己免疫性心筋炎の発症には、IL-6/RORγt系を介したTh17細胞の誘導が必須であることが明らかになった。自己免疫性心筋炎モデルは、ウイルス性心筋炎のモデルとされており、ウイルス性心筋炎から心不全に至る過程にIL-6/RORγt系が重要であり、IL-6受容体抗体がその治療に有効である可能性が示唆された。
1: 当初の計画以上に進展している
年度内に論文発表に至ったことが挙げられる。また、並行して行っている研究からTh17細胞の新規機能の手がかりを得ており、研究が大きく進展する可能性がある。
心筋炎終息時のTh17細胞が消失する。Th17細胞のcell fateを、発現遺伝子プロフィールを経時的に検討することにより解明する。
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