研究課題/領域番号 |
23390058
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
光山 勝慶 (金 勝慶) 熊本大学, 生命科学研究部, 教授 (10195414)
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キーワード | 酸化ストレス / ASKファミリー / 高血圧 / メタボリックシンドローム / 血管障害 |
研究概要 |
1.ASK1は肥満、インスリン抵抗性、脂肪肝に関与するが、ASK1欠損マウスと野生型マウスの網羅的遺伝子解析の結果から、ASK1が10種類以上のコレステロール代謝系酵素の発現調節に関与することが示唆され、脂肪肝やインスリン抵抗性の新しい分子機序が示唆された。 2.野生型マウスとASK1欠損マウス由来の血管内皮細胞を用いた研究から、ASK1によるeNOSアンカップリングにはGTPCH、DHFRの関与は少ないことがわかった。一方、ダール食塩感受性高血圧ラット(ASK1が心血管障害に関与しているラット)の障害血管組織のDNAマイクロアレイをおこなったところ、アルドステロン受容体を介して31種類の分泌蛋白質、16種類の酸化ストレス系分子、26種類の炎症系分子がダールラットで過剰発現しており、ASK1の下流に存在する可能性のある候補分子が同定された。 3.ASK2欠損マウスは、野生型マウスと比較して活動期、非活動期ともに血圧が有意に高く、いわゆるnon-dipper型の高血圧を呈することがわかった。また、高食塩食を与えるとASK2欠損マウスの血圧はさらに上昇し、食塩感受性高血圧であることが示された。血中レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系、ノルエピネフリン値およびエピネフリン値、腎臓のNa排泄機能は正常であったが、フェニレフリンによる血管の収縮反応が亢進しており、血管収縮性の亢進が高血圧の原因であることを明らかにした。さらに、ASK2欠損マウスは著明な心臓の肥大、線維化を呈し、心臓内の酸化ストレスの増加、炎症反応の亢進がみられ、その機序に心臓局所レニン-アンジオテンシン系の関与が示唆された。以上から、ASK2が血圧調節や心臓の肥大、リモデリングを調節する新たな分子であることを証明し、高血圧や心臓病の有望な治療標的分子と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ASK2欠損マウスの高血圧や心肥大の特徴や機序に関する研究は順調に進展した。一方、ASK1による血管障害の分子機序に関する研究は、一部予想通りの結果がでなかったこともあり、やや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
ASK1による血管障害の分子機序の研究に関して、一部予想した結果が得られなかったので実験計画を変更した。すなわち、アルドステロン注入による心血管障害モデルを中心に、ASK1の下流の制御遺伝子を検討することに変更した。このモデルで、既に候補となるような遺伝子群をみつけているので、今後の研究は計画通りに遂行できると考えられる。ASK2の高血圧の機序に関する研究は予定通りの計画で推進する。
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