アルツハイマー病(AD)に対するヒューマニン(HN)/EHシグナル活性化療法の臨床応用をより有効なものにするための基礎研究と前臨床研究の3年目を遂行した。まず、EHの基礎研究(HN/EHに関連する未解決な生物学的問題に対する基礎研究)に関しては、1)このシグナルのeffectorのひとつであるApollonの機能解析を行った。ApollonはユニークなIAP familyに所属する分子で、高発現すると,家族性AD 原因遺伝子により誘導される神経細胞死を抑制した。また,2) AD 発症を抑制する変異体A598T-APPの機能解析を行い、この変異体がTGFbeta2誘導性の神経細胞死シグナルを抑制する変異体であることを見いだした。次に、3)作製したEH transgenic マウスをAD マウスに掛け合わせdouble transgenic miceを作製した。まだ十分なNが得られていないが、作成後6ヶ月で,記憶行動試験を行う予定である。また、4)EHの精子前駆細胞の細胞死抑制作用に関しては、N=3ながら、gonadotropin-releasing hormone antagonist であるCetrorelix誘導性のマウス睾丸germ cells 細胞死をEHが抑制することを見いだした。最後に、5)14-3-3 sigmaが細胞外に分泌され,EH と結合してEHの神経細胞死抑制活性を抑制し,14-3-3beta はEHの細胞外分泌を抑制することを見いだした。次に、AD の生化学的早期診断法を確立する研究に関して、ヒトの髄液においても1-5 nMレベルのEHが存在することを見いだし,AD罹患者の髄液で低下する傾向があることを見いだした。今後、Nを増やして,さらに検討を重ねる予定である。
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