研究概要 |
リゾホスファチジン酸(LPA)の第四受容体(LPA4)の細胞内シグナルによる脂肪細胞分化抑制機構の解明が本研究の目的である。in vitroで脂肪細胞へ分化させることができるマウス由来の胎児線維芽細胞(MEF)またはマウス3T3L1繊維芽細胞において高いレベルで発現するLPA4を選択的に活性化し、脂肪細胞分化に関わるシグナルへの影響をまず観察した。LPA受容体は6種類存在するが、本研究においてLPA4を特異的に活性化できるアゴニストを同定することができた。そこで、このアゴニストでMEFのLPA4を選択的に刺激して、以下のin vitro解析を行った。 1. 転写因子COUP-TF2(Xu et al., PNAS [2008])および分泌タンパク質BMP-2(Huang et al., PNAS [2009])のmRNA発現レベルに変化はなかった。 2. LPA刺激に応じて細胞質から核内へ移行するとされるFHL2(Yang et al., EMBO J [2005])に注目したが、LPA4依存的な変化は認められなかった。 3. Wnt/β-カテニン経路(Yang et al., PNAS [2005])にLPA4刺激が影響するかを検討したが、影響は認められなかった。 一方、in vivoの研究では網膜血管新生におけるLPA4の影響をLPA4-KOマウスを使って観察した。生後7日目(P7)マウスを高酸素条件下(75% O2)でP12まで飼育し、その後大気圧条件下(21% O2)に戻してP17まで飼育した。摘出した眼球より作製した網膜の固定標本において、期待通り病的な血管新生領域が網膜中心部の無血管領域とともに確認できた。しかし、同腹仔の野生型とKOマウスで比較したところ両者に明らかな違いは認められなかった。
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