研究課題
前年度に引き続きCD72の糖鎖リガンドの同定を行なった。ヘパリンは硫酸化多糖であり、また、ヘパリン誘導性血小板減少症と呼ばれる病態では、ヘヘパリンに結合する血清タンパクであるPF4とヘパリンの複合体に対する自己抗体産生がおこる。そこで、組み換えCD72タンパク質を用いたELISA法により解析したところ、ヘパリンがCD72の糖鎖リガンドであることが明らかとなった。また、我々は、抗DNA抗体H鎖56Rトランスジェニックマウスにおいて、56R H鎖とVκ38Cからなる免疫グロブリンがSm/RNP抗原に反応することを明らかにした。また、我々はCD72がSm/RNPと反応することを明らかにしたので、CD72がSm/RNP反応性B細胞を制御するかを解析するために、CD72欠損56Rマウスを作成した。このマウスB細胞のVκ38C発現を解析したところ、Vκ38C発現細胞が56Rマウスに比べて有意に増加していることを明らかにし、CD72がSm/RNP反応性B細胞を制御することを明らかにした。さらに、これらのマウスに自己免疫誘導性のFaslpr変異を持つマウスと交配し、CD72欠損56R-lprマウスを作成したところ、Vκ38C陽性細胞が減少するという予想外の結果を得た。しかしながら、このマウスは自己抗体の産生や激しい自己免疫症状を呈することから、自己反応性B細胞が自己抗体産生細胞に分化するために、自己反応性Vκ38C陽性細胞が減少することが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本研究の目的はCD72のリガンドを同定し、その疾患制御での役割を明らかにすることであるが、すでにCD72が全身性エリテマトーデスの疾患発症に関わるSm/RNP抗原に反応することを明らかにし、さらに、我々が開発したSm/RNP反応性B細胞を同定するマウス実験系を用いて、CD72が実際にSm/RNP反応性B細胞の制御に関わることを明らかにした。また、昨年度はCD72に硫酸化糖鎖であるスルファチドが結合することを明らかにし、実際にCD72がスルファチドへの抗体産生を制御することを示したが、疾患との関連を明らかにすることはできなかったので、今年度は、別の硫酸化糖鎖であるヘパリンにCD72が会合することをしめした。これらの成果から、本研究は概ね順調に進展していると判断される。
これまでに、それぞれCD72が全身性エリテマトーデスおよびヘパリン誘導性血小板減少症での自己抗体の標的分子であるSm/RNP抗原およびヘパリンに反応することを明らかにし、さらに、CD72がSm/RNP反応性B細胞を制御することを明らかにした。これらの成果をもとに、CD72の疾患での役割やまたそのメカニズムの解析を行なう。まず、CD72とこれらの自己抗体関連抗原への反応がどのようにB細胞の機能を制御するのかを明らかにするために、すべてのB細胞がニトロフェノールに反応する抗原受容体を発現するQMマウスをCD72欠損マウスと交配し、得られたマウスのB細胞をニトロフェノールと複合体を形成したこれら自己抗原と反応させ、シグナル伝達やその他の活性化をCD72が制御するかを明らかにする。また、CD72欠損マウスをヘパリン/PF4複合体で免疫したり、あるいはCD72欠損56R-lprマウス等の全身性エリテマトーデス様自己免疫疾患発症を解析することで、CD72の疾患発症における役割の解明を行なう。
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (19件) (うち招待講演 8件)
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