研究概要 |
セリン/スレオニンキナーゼWNK(with no lysine(K)ファミリーは、線虫・ショウジョウバエからほ乳類に至るまで保存されており、ほ乳類には4つのWNKファミリー分子が存在する。その内、WNK1及びWNK4は偽性低アルドステロン症II型(PHAII)と呼ばれる常染色体優性遺伝性の高血圧症の原因遺伝子として同定されている。我々は以前WNK→SPAK/OSR1→Na,K,Cl共輸送体というシグナル伝達経路が存在することを示し、その制御異常がPHAIIで見られる高血圧症の発症原因の一つになっていることを示すことができた。しかしながら、このシグナル経路の制御異常が、PHAIIで見られる他の病態、歯や骨の発育不全や精神発達遅延などの原因とは考えにくく、他のシグナル経路の存在が予想された。そこで本研究は、新たにショウジョウバエを用いて、WNKと相互作用する因子の探索を行うことにし、解析を進めた。 ショウジョウバエのWNK(DWNK)及びその下流因子の相同因子であるFrayが、ほ乳類のWNK及びOSR1と同様の相互作用を持つかを調べたところ、DWNK及びFrayも培養細胞中で相互作用し、DWNKはFrayをリン酸化していた。また、DWNK及びFray、ほ乳類のWNK1及びOSR1の異所発現系用いて、翅後部に異所的に発現させたところ、全ての発現系においてwing veinと呼ばれる翅の支持組織の異所的形成という表現型が観察された。以上のことから、WNK→OSR1というシグナル伝達経路は、ショウジョウバエでも保存されている経路であることが予測された。我々のこれまでの研究であるマウスや線虫における結果と合わせて考えると、WNKシグナル伝達経路は進化的に広く保存されていると考えられた。
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