研究概要 |
背景)iPS細胞は、多能性を応用して個人に対応した移植細胞や組織を作製するための細胞ソースとなることが期待されている。しかし、体細胞がiPS細胞に再プログラム化する機構はほとんど解明されておらず、医療応用を見据えたiPS細胞の品質管理の障害になっている。 目的)体細胞からiPS細胞へ一方通行の道筋をたどる細胞株を樹立し、その結果を他の再プログラム化誘導法である細胞融合と比較することで共通のメカニズムを浮き彫りにする。 平成23年度の成果)ヒト繊維芽(TIG)細胞株でOct4,Sox2,Klf4,c-MycおよびDsRed(サイレンシングマーカー)を強制発現させ30日後に出現したコロニーを全てクローニングした。その結果、安定に自己増殖する繊維芽細胞(iFSC;induced fibroblast stem cell)株が複数株樹立された。ヒトFSCは、外来性のOct4を発現するが、内在性Oct4は発現していなかった。iFSCを高密度(1x10^6/6cm培養皿)で培養すると7日程で、高効率にヒトiPSC(induced pluripotent stem cell)が誘導された。ヒトiPSCはDsRedマイナス細胞クローンとして、再プログラム化誘導後3日には確実に同定された。DsRedマイナス細胞クローンは全てヒトiPSCクローンになった。約30クローン/6cm培養皿の頻度で出現した。出現したヒトiPSc細胞株は通常のヒトiPScと同様の遺伝子発現プロフィールを持っていた。体細胞がiPS細胞に再プログラム化される機構を解析するための細胞株の樹立に成功した。
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