研究課題
背景)iPS細胞は、多能性を応用して個人に対応した移植細胞や組織を作製するための細胞ソースとなることが期待されている。しかし、体細胞がiPS細胞に再プログラム化する機構はほとんど解明されておらず、iPS細胞技術を医療応用する上での障害になっている。目的))体細胞からiPS細胞へ一方通行の道筋をたどる細胞株を樹立し、その結果を他の再プログラム化誘導法である細胞融合と比較することで共通のメカニズムを浮き彫りにする平成25年度の成果)ヒト体細胞からiPS細胞への再プログラム化過程の中間状態にある間葉系幹細胞、iRS (intermediately reprogrammed stem)細胞が、安定に維持可能な細胞株として樹立された(発表準備中)。iRS細胞は培養条件をかえる事で、再プログラム化が再スタートしiPS細胞へ転換する。転換過程の段階ごとの細胞での遺伝子発現やエピジェネティクスの解析を行い、再プログラム化に伴う経時的変化を明らかにした。また、細胞融合による再プログラム化過程におけるDNA脱メチル化関連因子Tetの役割明らかにした。細胞融合研究の成果は、Molecular Cellに発表された。ヒトiRS細胞は、単一細胞からの増殖が可能である特性を生かして、CRISPR技術を介したゲノム編集を試みた。その結果、非常に高効率にゲノム編集が可能であることが明らかになり、iRS細胞のiPS細胞化により遺伝子改変iPS細胞を作製することに成功した。
2: おおむね順調に進展している
再プログラム化の分子機構の解明につながる新規初期化細胞株, iRS (intermediately reprogrammed stem) 細胞の樹立・維持に成功し、効率よくiPS細胞に再プログラム化させることが可能になった。このiRS-iPS細胞の再プログラム化の過程における遺伝子発現の変化を解析できた。加えて、iRS細胞を用いて、世界が注目する遺伝子改変ヒトiPS細胞の作製に成功した。
iRS-iPS細胞の再プログラム化のメカニズムをエピジェネティクス、特にヒストンのメチル化やアセチル化をより詳細に解析する。また、iRS-iPS細胞の転換制御の鍵となるシグナル伝達系を解明する。iRS細胞でより多くの遺伝子改変を行うことで、汎用的なゲノム編集技術として確立する。
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Molecular Cell
巻: 49 ページ: 1023-1033
10.1016/j.molcel.2013.01.032