研究課題
細胞分化における遺伝子発現の変化には、染色体分配に関わるコヒーシンや、インシュレーターに結合するCTCFなどによる染色体のルーピングが関与する。そこで本研究では、これらの因子による染色体ダイナミクスを介した細胞分化機構を解明することを目的として、T細胞へ分化誘導可能な造血系前駆細胞(EBF KO proB細胞)を用いて解析を行った。まずコヒーシンとCTCFが結合する遺伝子をゲノムワイドに同定するために、未分化なEBF KO proB細胞と、Notchリガンドを発現するストローマ細胞上でIL-7濃度を下げ、T細胞へと分化誘導させたEBF KO proB細胞で、コヒーシンのサブユニットRad21と、CTCFに対するChIP-Seq解析を行った。その結果、TCF1、Gata3、Dtx1、Bcl11bなどのT細胞の分化誘導に伴って発現が上昇するT細胞分化のマスター遺伝子にRad21とCTCFが結合することがわかった。次にRad21とCTCFの機能解析をするために、これらの因子をmiRNAによってノックダウンしたところ、TCF1、Gata3、Dtx1、Bcl11bの発現がさらに上昇するとともに、T細胞への初期分化が促進されたことから、コヒーシンとCTCFはこれらの遺伝子の発現を負に制御することにより、分化を抑制する可能性が示唆された。一方、我々がこれまで抗原受容体遺伝子の再構成を対象に解析を行い、染色体上の離れた領域を、染色体ルーピングで接近させることによって組換えを誘導するE2A転写因子についても併せて解析を行った。その結果、E2AをノックダウンするとBcl11bや、Dtx1、Hes1等のNotchの標的遺伝子の発現が低下し、T細胞への初期分化が抑制されたことから、E2AはT細胞分化制御遺伝子の発現を正に制御することにより、T細胞の初期分化にも関与しうることがわかった。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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