研究課題/領域番号 |
23390069
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
豊福 利彦 大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 特任准教授 (60322179)
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キーワード | セマフォリン / 網膜色素変性症 / Sema4A / 細胞内膜輸送制御 |
研究概要 |
セマフォリンが神経発生以外に心血管発生及び免疫調節機能を有することが明らかとなっている。さらにSema4Aの遺伝子欠損マウスは視細胞層の欠落を示すことが明らかになった。本研究では、Sema4Aにより膜輸送される分子群のうち視細胞の生存を決定する分子を同定するとともに、Sema4Aによる細胞内分子群の輸送を可視化技術により時空間的に解明することを目的とする。 結果 Sema4Aのレチノイド代謝調節の分子群の同定:Sema4Aはレチノイド結合タンパク質と結合し、色素上皮細胞内でのレチノイド再生経路を維持していた。 酸化ストレス下でのSema4A結合蛋白質の同定:Sema4Aは酸化ストレス下で、視細胞保護作用を有するプロサポシンの細胞内輸送と細胞外放出を制御していることを見出した。 Sema4Aの膜輸送制御の時空間的解析:Sema4Aとレチノイド結合タンパク質が色素上皮細胞内での移動を3次元的に時間経過を追って撮影した。両者は結合した状態で同心円状に移動することが明らかとなった。 意義・重要性 これまでのセマフォリン研究は、神経ガイダンス因子としての機能解析が中心であり、低分子量G蛋白質の活性、細胞内骨格の再構築に焦点が当てられてきた。しかし、本研究で申請者は膜型セマフォリンSema4Aが細胞内膜輸送制御を介する細胞内代謝調節に関わることを実証した。このように本研究はガイダンス分子の機能と細胞内膜輸送の結びつけに挑戦し、ガイダンス因子の"細胞内ガイダンス"機能の時空間的な解明を試みる野心的な研究である。本研究の結果は、セマフォリン研究の新しい局面を示すとともに、有効な治療法のない網膜色素変性症などの難治性疾患に対する革新的治療の創造に道を開くものであると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
成果は分子生物学・発生学分野で世界的に評価の高いGenes & Development誌に出版予定である。
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今後の研究の推進方策 |
人の網膜色素変性症患者においてSema4Aの遺伝子異常が同定されている。この遺伝子異常を導入したノックイン・マウスの解析により人の病態とその治療法の開発を進める予定である。
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