研究課題
セマフォリンは神経発生におけるガイダンス因子として同定されたが、神経発生以外に心血管発生及び免疫調節機能を有することが近年明らかとなっている。このセマフォリン分子群の機能解析は遺伝子改変マウスを作製して行われてきた。網膜色素上皮細胞に発現するSema4Aの遺伝子欠損マウスは視細胞層の欠落を示した。本研究では、Sema4Aによる色素上皮細胞による視細胞維持作用を解明することを目的とした。結果 ①Sema4Aのレチノイド代謝調節の分子群の同定:視細胞が光刺激を受けるとレチノイドの位相転化をきっかけに視細胞の電気的興奮が起こる。この時生じた位相転化したレチノイドは色素上皮細胞によって再生され、再利用される。Sema4Aはレチノイド結合タンパク質と結合し、色素上皮細胞内でのレチノイド再生経路を維持していた。②酸化ストレス下でのSema4A結合蛋白質の同定:光刺激は視細胞の情報伝達に重要であるが、同時に強い酸化スツレスとして視細胞死を誘発する。Sema4Aは酸化ストレス下で、視細胞保護作用を有するプロサポシンの細胞内輸送と細胞外放出を制御し、視細胞を酸化ストレスより防御していた。意義・重要性 これまでのセマフォリン研究は、神経ガイダンス因子としての機能解析が中心であり、低分子量G蛋白質の活性、細胞内骨格の再構築に焦点が当てられてきた。しかし、本研究で申請者は膜型セマフォリンSema4Aが細胞内膜輸送制御を介する細胞内代謝調節に関わることを実証した。このように本研究はガイダンス分子の機能と細胞内膜輸送の結びつけに挑戦し、ガイダンス因子の“細胞内ガイダンス”機能の時空間的な解明を試みる野心的な研究である。本研究の結果は、セマフォリン研究の新しい局面を示すとともに、有効な治療法のない網膜色素変性症などの難治性疾患に対する革新的治療の創造に道を開くものであると期待される。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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Nat Commun
巻: 4 ページ: 1-10
10.1038/ncomms2420