生物の生体防御反応において、自然・獲得免疫応答やインターフェロン分泌は中心的な役割を果たす。侵入した細菌やウイルスが含有する病原体関連分子パターンは、細胞表面または細胞内の受容体タンパク質によって捕捉され、NF-κBシグナル経路やインターフェロン産生経路の活性化を導く。申請者らは、ユビキチンリガーゼ複合体(LUBAC)がユビキチンのN末端を介する新規直鎖状ポリユビキチン鎖を生成することで炎症や自然・獲得免疫制御に重要なNF-κBシグナル経路を制御することを同定した。 さらに平成25年度には、DNAウイルスの識別に重要な働きをすることが明らかになったヒトcyclicGMP-AMP合成酵素(cGAS)の構造と機能の解明を行い、X線結晶構造解析によってcGASにおいてDNA認識に重要と示された塩基性アミノ酸クラスターやZnフィンガー領域が、インターフェロン産生やNF-κB活性など生理機能発現に重要であることを示し、PLoS One誌に発表した。cGASは2013年に同定されたばかりの新規酵素であるが、先行して報告されたマウスやブタのcGASの構造解析に加えて、今回のヒト酵素の解明がなされ、cGASの外来DNA識別機構が進化的に保存されていることが解明された。cGASは下流に小胞体膜タンパク質であるSTINGを介してTBK1キナーゼを活性化し、インターフェロン産生経路を主に活性化する。ルシフェラーゼ活性からNF-κBの活性化も検知されたが、IKKやIκBαのリン酸は検出出来ず、どのような経路でNF-κB活性化を導くか、今後の検討を要する。
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