研究課題
1、ホスホリパーゼCε(PLCε)依存性の炎症性サイトカイン発現制御機構の解析のため、ヒト表皮角化細胞株PHK16-0bにおける腫瘍壊死因子α(TNFα)刺激によるケモカインCCL2(MCP-1)の発現誘導がPLCε特異的siRNAにより阻害される系を用いた解析を進めた。ヒトCCL2遺伝子プロモーター領域をルシフェラーゼ・レポーター・プラスミドにクローン化し、その部分欠損変異体を作製して検討した結果、NF-κB結合領域がTNFα刺激によるCCL2遺伝子活性化に必須であることが示唆された。また、ヒト結腸癌由来Caco-2細胞でのPLCε特異的siRNAによるノックダウン実験から、TNFα刺激によるNF-κBの持続的な核移行にPLCεが関与することを見出した。さらに、この機能に関わるPLCεの持続的な活性化にはTNFα刺激により細胞が分泌する液性因子を介したオートクラインな機構が関与することを、液性因子受容体アンタゴニストを用いた解析から明らかにした。2、PLCεの炎症と発がんへの関与については、PLCεノックアウト(KO)マウスを用いたデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)飲水による潰瘍性大腸炎モデルとApcMin遺伝子背景での大腸腺腫形成モデルを用いて解析した。その結果、潰瘍性大腸炎モデルでは、PLCεKOマウスでの炎症反応の低下を病理学的解析により証明した。特に、PLCεKOマウスの腸管上皮細胞におけるケモカインCxcl2等の発現低下を免疫組織染色により示した。大腸腺腫形成モデルでは、PLCεKOマウスで腫瘍形成とその悪性化の抑制が見られた。このPLCεKOの腫瘍形成抑制効果は、DSS飲水により腸炎が誘導される領域で特に顕著に認められたことから、PLCεが炎症性サイトカインの産生誘導を介して炎症を促進し、それを通して大腸腺腫形成に関与するという基本メカニズムが強く示唆された。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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Biochem. Biophys. Res. Comm
巻: 445 ページ: 89-94
10.1016/j.bbrc.2014.01.149
http://www.med.kobe-u.ac.jp/molbiol/index.html