研究課題/領域番号 |
23390074
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研究機関 | (財)大阪バイオサイエンス研究所 |
研究代表者 |
古川 貴久 (財)大阪バイオサイエンス研究所, 発生生物学部門, 研究部長 (50260609)
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キーワード | 中枢神経系 / 網膜 / 細胞運命 / 光受容体 / 遺伝子制御 |
研究概要 |
脊椎動物の中枢神経系における共通前駆細胞(common progenitor)からの細胞運命決定のメカニズムはいまだに謎である。申請者らは、転写因子Otx2が視細胞の運命決定因子であることを報告し解析を行ってきた。最近、申請者らはOtx2転写制御の視細胞エンハンサー領域(500bp)を同定することに成功した。さらに、網膜前駆細胞において転写因子RaxがOtx2エンハンサーを活性化する因子であることを見出した。本提案ではRax-EGFP、Otx2-mCherryのノックインマウスを作製し、網膜スライスのライブイメージングで視細胞の運命決定機構を解明する。また、視細胞の運命を安定化する転写リプレッサーBlimp1とそれに結合するヒストンメチルトランスフェレースG9aの視細胞運命決定における機能および人の視力に重要な錐体視細胞の発生機構を解析する。 申請者は、本研究において転写因子Raxの時期特異的コンディショナルノックアウトマウスを作製した。胎生期ならびに生後特異的なRaxノックアウトを組織学的および網膜電図測定にて解析したところ、錐体視細胞の分化と成熟が阻害されていた。これよりRaxが錐体視細胞の分化と成熟を制御していることが生体レベルで明らかとなった(論文投稿準備中)。また、Rax-EGFP、Otx2-mCherryのノックインマウスを作製し、現在キメラマウスが生まれており、最終的にノックインマウスができ次第ライブイメージング解析を行う。G9aのDkk3-Creマウスによる胎生期特異的コンディショナルノックアウトマウスならびにCrx-Creマウスによる視細胞特異的コンディショナルノックアウトマウスの組織学的解析を行い、G9aが網膜前駆細胞にて前駆細胞関連遺伝子をメチル化し不活性化することによって神経分化を制御することを見いだした(論文投稿中)。以上の成果は、神経科学の進歩に寄与するとともに、再生医療や遺伝子治療の基盤となる知見である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
9の研究実績の概要で述べたように、研究実施計画で計画した3項目のうち、2項目((2)b,c)は論文にまとめている状況であり、1項目((2)a)も順調にマウスを作製しつつある状況であることから、おおむね計画が順調に達成されていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、脊椎動物の中枢神経系における共通前駆細胞(common progenitor)からの細胞運命決定メカニズムを解明するために、ノックインマウスを用いて、Rax,Otx2といった視細胞運命決定の鍵となる蛋白質の解析をすることによって、網膜前駆細胞から視細胞への運命決定のメカニズムを解明していく。さらに、その知見をいかし、視力を司る錐体視細胞の発生と生存の機構解明を進めるとともに、再生医学や遺伝子治療の基盤作りに貢献していく。
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