研究課題/領域番号 |
23390074
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
古川 貴久 大阪大学, たんぱく質研究所, 教授 (50260609)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 中枢神経系 / 網膜 / 細胞運命 / 光受容体 / 遺伝子制御 |
研究概要 |
脊椎動物の中枢神経系における共通前駆細胞から、細胞運命が決定される分子メカニズムはいまだに明らかになっていない。申請者は、転写因子Otx2が視細胞の運命決定因子であることを報告し解析を行ってきた。最近、申請者はOtx2転写制御の視細胞エンハンサー領域を同定することに成功した。さらに、網膜前駆細胞において転写因子RaxがOtx2エンハンサーを活性化する因子であることを見出した。本提案ではRax-EGFP、Otx2-mCherryのノックインマウスを作製し、網膜スライスのライブイメージングで視細胞の運命決定機構を解明する。また、視細胞の運命を安定化する転写リプレッサーBlimp1とそれに結合するヒストンメチルトランスフェレースG9aの視細胞運命決定における機能および人の視力に重要な錐体視細胞の発生機構を解析する。 申請者は最近、ヒストンメチルトランスフェレースG9aが網膜に比較的強く発現することを見出した。G9aのノックアウトマウスは胎生致死であることから、G9aの神経系発生における機能を明らかにするために、G9aの網膜特異的細胞コンディショナルノックアウト(CKO)マウスを作製し解析した。G9a CKOマウス網膜では、H3K9のメチル化がほとんど消失し、網膜神経細胞は分化したものの、分化した神経細胞に前駆細胞特異的な遺伝子群が発現し、それによって細胞死を起こすことを見出した。さらに、網膜視細胞特異的なCKOマウスを作製し解析したところ、網膜全体のCKOとは異なり成熟神経細胞の細胞死のみが認められた。これによってG9aによるH3K9のメチル化は、修飾が行われる網膜前駆細胞で作用するのではなく、分化後に不必要な遺伝子発現を抑えることによって機能することを見出し論文として報告した。この成果は、神経細胞の発生と維持に、エピジェネティックな制御機構による細胞記憶が重要であることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で述べたように、研究実施計画で計画した3項目のうち2項目は研究の成果が順調にあがり、ともに論文として報告した。Rax-EGFP、Otx2-mCherryのノックインマウスマウス作製もOtx2-mCherryマウスは作製済みであり、Rax-EGFPもキメラマウス作製中の状況であることから、おおむね計画が順調に達成されていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
申請者は、脊椎動物の中枢神経系における共通前駆細胞(common progenitor)からの細胞運命決定メカニズムを解明するために、引き続きノックインマウスを用いて、Rax, Otx2といった視細胞運命決定の鍵となる蛋白質の解析を行い、網膜前駆細胞から視細胞への運命決定のメカニズムを解明していく。さらに、その知見をいかし、視力を司る錐体視細胞の発生と生存の機構解明を進めるとともに、再生医学や遺伝子治療の基盤作りに貢献していく。
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