研究課題
網膜色素変性症は、網膜視細胞が細胞死により徐々に脱落し失明に至る疾患であるが、その症状の程度や時期は原因遺伝子により多様である。申請者は、視細胞発生の分子機構の解明を目指すとともに、網膜疾患の原因解明や治療につながるような基礎研究を行っている。網膜色素変性症のうち、網膜視細胞の発生異常を伴い乳幼児期から強い視力障害を呈する重篤な疾患に対して、遺伝子治療が有効であるかどうかは不明であった。また発生期の網膜にどの血清型のアデノ随伴ウイルスが最も感染効率が良いかも不明であった。申請者は遺伝子治療に最適なアデノ随伴ウイルスベクターの血清型を同定し、以前に申請者が開発した重篤な網膜変性症を呈するCrxノックアウトマウスをモデルとして、遺伝子治療が有効であるかを検証した。Crxは転写因子であり、網膜視細胞の発生や機能に必要なオプシン、トランスデューシンを含むほとんどの視細胞遺伝子群を転写活性化する機能を持つマスター遺伝子である。ヒトにおいてCrxの異常は、幼少時より失明に至るレーベル黒内障と呼ばれる重篤な網膜色素変性症の原因となることが知られている。申請者はCrxノックアウトマウスの新生児期の網膜下にCrxを発現するようにデザインしたアデノ随伴初ウイルスを投与し、成体期に網膜の神経活動を網膜電図により測定したところ、消失していた網膜電図の活性がある程度回復していることを見出した。さらに、組織切片の免疫組織染色と電子顕微鏡観察を行い、コントロール網膜では形成されなかった視細胞外節が短いながら形成されていることを観察した。本研究により、重篤な変性を示す網膜視細胞でも、アデノ随伴ウイルスを用いた遺伝子治療により改善できることが明らかとなった。また同時にiPS細胞などを用いた再生医療との融合によって、さらなる難治性疾患治療への応用に貢献することが期待される。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (18件) (うち招待講演 7件) 図書 (1件)
Eur J Neurosci.
巻: 38 ページ: 2823-2831
10.1111/ejn.12284.
Proc Natl Acad Sci USA
巻: 111 ページ: 3751-3756
10.1073/pnas.1311480111.
Hum. Mol. Genet
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1093/hmg/ddu048.
Chromosome Res.
巻: 20 ページ: 535-554
10.1007/s10577-013-9375-7.
PLOS Gene.
巻: 9 ページ: e1003983
doi: 10.1371/journal.pgen.1003983.
J Neurosci.
巻: 33 ページ: 19341-19351
10.1523/JNEUROSCI.1362-13.2013.