研究課題/領域番号 |
23390077
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
小崎 健一 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 准教授 (50270715)
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研究分担者 |
稲澤 譲治 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (30193551)
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キーワード | microRNA / 癌抑制遺伝子 / DNAメチル化異常 / 機能ゲノム学 / 治療ゲノム学 |
研究概要 |
本研究では、ゲノム情報発現系の内在性制御機序を担う機能性低分子RNAとして注目されるmicroRNA(miRNA)に着目し、合成二本鎖miRNA(ds-miRNA)ライブラリーを用いた機能的スクリーニングならびにゲノムにおけるCpG islandの腫瘍特異的DNA過剰メチル化を指標とした網羅的DNAメチル化スクリーニングを基盤とする統合的解析(Functional genomics)を展開し、癌治療体系における新たなRNA創薬に寄与する癌抑制遺伝子型miRNA(TS-miRNA)とその標的分子の単離・同定を試みる。 今年度は、in vitro細胞増殖抑制効果を指標とした327種類のmiRNA配列の機能的スクリーニングに癌細胞株と臨床検体におけるDNAメチル化解析ならびに発現解析を組み合わせた統合的解析を施行し、口腔扁平上皮癌(OSCC)あるいは子宮体癌(EC)においてDNAメチル化異常により発現抑制される新規TS-miRNAとしてmiR-218とmiR-152を絞り込み、これらのTS-miRNAに共通する新規標的分子Rictorを同定した。さらに、詳細なin vitro解析から、miR-218はRictorを標的分子とする事によってTOR-Aktシグナル経路を負に制御する事を明らかした(Uesugi,et al. Cancer Res., 2011)。一方、miR-152配列を有するds-miRNAを用いたin vivo解析では、TS-miRNAによるmiRNA replacement therapyの癌治療における有効性を示した(Tsuruta,et al. Cancer Res., 2011)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度は、OSCCとECにおけるin vitro機能的スクリーニング等によって、新規TS-miRNAとしてmiR-218とmiR-152、これらに共通する新規標的分子Rictorの同定等に成功し、その研究成果を当該領域の英文誌に論文発表した(Uesugi, et al. Cancer Res., 2011 ; Tsuruta, et al. Cancer Res., 2011)。
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今後の研究の推進方策 |
次年度に向けては、核酸医薬としての新規癌治療法の開発や個別化医療の実現などに大きく貢献すべく、さらなる新規TS-miRNAとその標的分子の同定を目指して、1)OSCCにおける網羅的DNAメチル化スクリーニング等を開始し、良好な結果を得つつある。 また、癌の悪性形質獲得や浸潤・転移機序に関与するとされる上皮-間葉転換(epithelial-mesenchymal transition, EMT)にも注目し(Kurasawa, et al. Oncogene, 2011)、EMT可塑性膵癌細胞株でのE-カドヘリン発現誘導を指標としたin vitro機能的探索モデル系を独自に確立し、2)470種類のmiRNA配列を搭載したds-miRNAライブラリーによる機能的スクリーニング等を進めつつある。
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