研究概要 |
本研究の目的は、内在性の機能性低分子RNAであるmicroRNA (miRNA)に着目し、合成二本鎖miRNAライブラリーの機能的スクリーニングならびに腫瘍特異的CpG island過剰メチル化を指標とした網羅的DNAメチル化スクリーニングを基盤とする統合的解析(Functional genomics)を進め、新たな癌RNA創薬に寄与する癌抑制遺伝子型miRNAの同定と、それらによる新規癌治療法の開発を試みる事である。本研究課題では、既に三種類の新規癌抑制遺伝子型miRNAとそれらの直接的標的分子を同定し、さらに癌抑制遺伝子型miRNAの核酸医薬としての有効性をも実証してきた(Uesugi, et al. Cancer Res, 2011; Tsuruta, et al. Cancer Res, 2011; Endo, et al. Carcinogenesis, 2013)。今年度は、癌におけるmiRNA発現異常と上皮-間葉転換(EMT)制御異常に着目し、EMT/MET可塑性を有する膵癌細胞株Panc1を用いて、E-カドヘリンのプロモーター活性を蛍光値として検出可能な独自のin vitro機能的探索モデル系を確立し、同モデル系を用いた470種類の合成二本鎖miRNAの機能的探索等から新規EMT抑制性miRNAであるmiR-655を同定した。さらに、miR-655がE-カドヘリンの発現を誘導ならびに典型的なEMT誘導遺伝子の発現を抑制し、且つ間葉系から上皮系細胞への形態変化を伴った運動能や浸潤能への抑制活性を有する事、食道扁平上皮癌症例におけるmiR-655発現と予後に有意な相関性を認める事、TGF-βシグナルにおいて重要なZEB1とTGFBR2がmiR-655の直接的標的遺伝子である事等を明らかにした(Harazono et al., PLOS ONE, 2013)。
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