研究課題
全国の小児科医からの依頼を受けて原因不明の精神運動発達遅滞患者に対する先天性グリコシル化異常症CDGのスクリーニングを継続した。平成25年度は84件を分析し、7家系(N型5家系、ムチン型2家系)に糖鎖構造異常を見出した。これらのうちN型糖鎖の2家系については、他機関において遺伝子解析による遺伝子同定が完了した。また、国内機関(鳥取大)から5検体、ドイツ・ミュンスター大から40検体の確認分析依頼を受けてCDGに関する国内外の機関連携強化に取り組んだ。さらに、分析法の改良に取り組んだ。患者血清から免疫アフィニティ法によって精製したトランスフェリン(80kDa)をそのままエレクトロスプレイイオン化飛行時間型質量分析計で分析できるよう、トラップカラムを用いる液体クロマトグラフィー質量分析法を構築した。これにより数マイクロリットルの患者血清を用いて分析を10分で完了できるようになった。この新しい分析法は十分な分解能をもっているので、Nアセチルノイラミン酸(残基質量291 Da)1残基の脱離を正確に同定できる。従来、残基単位の変化を検出するには糖ペプチドを試料とする方法を用いていたが、この新しい方法によってワークフローを大幅に簡略化でき、過年度に開発したアポリポ蛋白C3のムチン型糖鎖を解析する方法と本法の組み合わせがCDGスクリーニング分析法の完成形である。ムチン型糖鎖のNアセチルノイラミン酸付加率およびN型糖鎖の付加率のそれぞれの正常値の設定が最後に残された問題で、最終年度である次年度に解決したい。
2: おおむね順調に進展している
先天性グリコシル化異常症の全体像解明の技術基盤整備が本研究の中心であり、N型とO型糖鎖解析法を確立できたことから全体として順調に進んでいるといえる。
CDGの全体像解明は一機関のみでできるものでないことから、これまで行ってきた内外機関との連携を継続し、また、この研究課題によって確立した新しい分析法を普及させる。また、分析結果の解釈を数値化できるよう、特に、N型糖鎖の付加率をもとめる方法を作る。N型とムチン型以外の糖鎖については、Oマンノース糖鎖の解析を、他機関との共同研究によって進めたい。
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