研究課題/領域番号 |
23390084
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
浅田 祐士郎 宮崎大学, 医学部, 教授 (70202588)
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研究分担者 |
佐藤 勇一郎 宮崎大学, 医学部, 助教 (90347055)
山下 篤 宮崎大学, 医学部, 助教 (90372797)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 糖尿病 / 動脈硬化 |
研究概要 |
糖尿病患者の動脈硬化症は進行が速く、動脈硬化性疾患(心筋梗塞・脳卒中)の予後も不良で、他の危険因子による動脈硬化症とは病態が異なることが指摘されてきたが、その詳細は不明で、治療効果判定に有用な指標マーカーも存在しない。本研究では、ヒトと実験動物の糖尿病性動脈硬化の病理像と代謝物質・代謝経路を解析し、糖尿病におけるアテローム血栓症の発症機序の解明と新規治療法への展開を目的としている。24年度は動物実験を中心に研究を進めた。 高脂血症ウサギの下肢動脈にバルーン障害とアロキサンにより糖尿病性動脈硬化を作成し、糖尿病性と非糖尿病性動脈硬化巣を分子病理学的手法と質量分析法(メタボローム解析)により解析した。その結果、糖尿病では、非糖尿病に比して脂質コアが大きく、虚血に関連した転写因子群・炎症性サイトカイン群の発現亢進が観察され、ヒト糖尿病動脈硬化巣の所見と矛盾しない結果であった。メタボローム解析では、糖代謝・アミノ酸代謝を中心に、約200種類の変動する代謝物質が確認され、糖尿病・非糖尿病間で有意に増減が異なる代謝物質 80種類を同定した。これらは糖尿病性動脈硬化症の新規マーカーの候補と期待できる。(特願2012-084684) 動脈硬化巣における虚血領域に着目し、グルコース取込を指標とした動脈硬化病変の可視化も試みた。アイソトープ標識したグルコースアナログ (FDG) と臨床用PET機器を用いて上記動物モデルの動脈硬化病変のイメージングに成功し、グルコース取込細胞は主にマクロファージで、取込量は病巣の血栓形成能を反映することが明らかとなった。この結果は、FDG-PETによる動脈硬化のイメージングは、病変の局在に加えて、危険度の高い病変の検出に有用な診断手法となる可能性を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
24年度は動物モデルでの研究を主に進めた。作成した糖尿病性動脈硬化巣はヒトの病巣に形態像・分子レベルでの性状ともに極めて類似したもので、病態解析に適したモデルが作成できた。またメタボローム解析では糖尿病性動脈硬化症ので有意に増減する代謝物質(80種)を同定し、新規マーカーの候補物質と期待される。さらに硬化性病変の可視化にも成功した。いずれの研究内容も当初の計画以上に順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
糖尿病患者の血管手術標本を用いて、病理組織解析とメタボローム解析を用いて、糖尿病性動脈硬化におけるエネルギー代謝の包括的検討を行い、糖尿病状態における硬化巣での特異的代謝変化を明らかにする。さらにヒトとウサギの両種において同様の変動を示す代謝物質を絞り込み、基礎研究と臨床診断に応用可能なバイオマーカーの同定を目指す。 同定した代謝物質の中からアイソトープ標識が比較的容易な物質を選出し、糖尿病性動脈硬化巣の検出に有用な画像診断プローブの開発基盤を目指す。
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