研究課題
NLRファミリーはアポトーシス誘導因子Apaf-1類似の細胞質蛋白群で、ヒトで20種類以上存在する近年、このファミリーの多くの蛋白が、免疫・炎症応答の誘導・制御に重要や役割を果たしていることが明らかになってきた。我々はこのファミリーに属するPYNOD(別名NLRP10)を同定し、PYNODがカスパーゼ1やASCの阻害因子として働きうることを示してきた。本研究では、我々が新規に樹立したPYNOD遺伝子欠損マウスの解析を中心に、PYNODの生理的・病理的役割を明らかにすることを目指している。本年度は、以下の結果を得た。PYNOD欠損マウスは、ASC欠損マウスと同様、SPF飼育環境では外見上際立った異常所見はなく、発育や妊孕性などにも異常は認められなかった。またヘマトクリット値、赤血球、血小板、白血球数は正常範囲内であり、リンパ節や脾臓における細胞数や組成なども野性型マウスと同様であった。さらにPYNOD欠損マウスから調整したマクロファージを対象にして自然免疫系の反応性を調べた。主としてサルモネラ菌、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、大腸菌、A型溶連菌などの細菌やインフルエンザウイルス、ワクシニアウイルスなどのウイルス感染後の応答を野性型マウスと比較検討したところ、PYNOD欠損マクロファージよるIL-1β、TNFα、IL-6などの炎症性サイトカインの産生は正常で、感染によっておこる細胞死も野性型と同程度であった。またサルモネラ菌感染によるカスパーゼ1の活性化も正常であった。また、高濃度のLPS投与によるエンドトキシンショック誘導実験でも、野性型と比較してPYNOD欠損マウスの生存率や血清サイトカイン濃度に明らかな差は認められなかった。以上の結果より、PYNOD欠損マウスの自然免疫応答は、ASC欠損マウスやPYNODトランスジェニックマウスと異なり、調べた範囲内では正常であることが判明した。
2: おおむね順調に進展している
平成23年度に行う予定だった研究計画をほぼ達成したため。
平成24年度は、自然免疫系から獲得免疫系はの橋渡しで重要な役割を果たす樹状細胞の機能を中心に解析を行う予定である。
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Nephron Extra
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http://dimb.w3.kanazawa-u.ac.jp/