研究課題
我々はNLRファミリーに属する細胞質蛋白質であるPYNOD(別名NLRP10)を同定し、PYNODがカスパーゼ1やASCの阻害因子として働きうることを示してきた。本研究では、我々が新規に樹立したPYNOD欠損マウスの解析を中心に、PYNODの生理的・病理的役割を明らかにすることを目指している。本年度は、先ず、野生型マウスおよびPYNOD欠損マウスなどの骨髄由来樹状細胞を用い、病原体成分(リポポリサッカライドなど)刺激や細菌(サルモネラ菌、黄色ブドウ球菌など)感染、ウイルス(インフルエンザウイルス、ワクシニアウイルスなど)感染による炎症性サイトカイン(IL-1β、TNFα、IL-6など)産生を比較した。その結果、いずれの刺激でもPYNOD欠損樹状細胞と野生型樹状細胞のサイトカイン産生に有意な差が認められなかった。昨年度の腹腔マクロファージを用いた解析や致死的エンドトキシンショックモデルの実験結果と合わせ、PYNOD欠損マウスでは、当初予想したような自然免疫応答の顕著な異常は認められなかった。一方、T細胞依存性遅延型過敏症応答のマウスモデルであるトリニトロクロロベンゼン接触過敏症応答を検討したところ、PYNOD欠損マウスは野生型マウスに比べ応答が抑制されていることが判明した。したがって、PYNOD欠損マウスは獲得免疫応答に異常を示すと考えられる。このため、自然免疫応答に関する当初計画を一部縮小し、野生型マウスとPYNOD欠損マウスの獲得免疫応答成立過程を比較検討した。最近、PYNOD欠損マウスでは抗原を取り込んだ局所樹状細胞の所属リンパ節への移動が抑制されていると報告されたたが、我々の解析ではそのような異常は認められなかった。現在、さらに詳細な解析を行っている。
2: おおむね順調に進展している
当初、PYNOD欠損マウスは自然免疫系に異常を示すと予想していたが、昨年度および本年度の研究結果から、自然免疫応答には顕著な異常を示さないことが明らかとなってきた。一方、予想外に獲得免疫応答に著名な異常があることが判明した。そのため、自然免疫応答に関する研究計画を一部縮小し、獲得免疫応答に関する解析を前倒しして進めているが、全体としてはおおむね順調に進展している。
PYNOD欠損マウスの自然免疫応答には顕著な異常が認められず、獲得免疫応答に異常が認められたため、今後は、獲得免疫異常の分子・細胞メカニズムの解析を中心に研究を進める。また、我々が以前樹立した抗PYNODモノクローナル抗体はウエスタンブロット解析ではPYNOD蛋白の特異的同定に有用であるが、PYNOD欠損マウスの組織染色では非特異的な染色が認められるため、より特異性の高いモノクローナル抗体の樹立を試みる。
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International Immunology
巻: 印刷中 ページ: 未定
10.1093/intimm/dxs161
Cancer Immunol. Immunother
巻: 61 ページ: 667-676
10.1007/s00262-011-1132-1