研究課題
本研究では、多数の組織検体の分子病理学的解析をもとに、多段階発がん早期の前がん状態において、DNAメチル化等のエピゲノム異常を惹起する分子機構を明らかにすることを目的とする。研究代表者は、臨床病理像と対応させたゲノム網羅的DNAメチル化解析 (メチローム解析)で、高悪性度のがんに至るまで継承されるcancer-proneのDNAメチル化プロファイルが、前がん段階において既に確立していることを示してきた。本研究期間では、cancer-proneのDNAメチル化プロファイルを示す前がん段階にある組織検体等で、発現等の異常を来たし、エピゲノム異常を誘導する可能性のある候補核内蛋白等を同定する。平成24年度までに腎組織検体で実施したメチローム解析で、前がん段階においてcancer-prone のDNAメチル化プロファイルが既に確立し、臨床病理学的に悪性度の高いがんを生じ、予後不良であるような腎細胞がんのCpGアイランドメチル化形質 (CIMP)陽性群を同定した。腎細胞がん固有のCIMPマーカー遺伝子も同定し、CIMP診断基準を開発した。エクソーム・トランスクリプトーム・プロテオーム解析で、CIMP陽性腎細胞がん症例において高頻度に異常を来すことが分かった分子を用いて、MetaCore分子経路解析を実施した。CIMP陽性腎細胞がんで異常を来す分子群には、ヒストンメチルトランスフェラーゼ・ヒストンアセチルトランスフェラーゼ等のエピゲノム制御蛋白が含まれることが分かった。平成25年度には、検証コホートのCIMP陽性腎細胞がんでも、ヒストンメチルトランスフェラーゼ・ヒストンアセチルトランスフェラーゼ等の異常が再現することを示した。腎細胞がん細胞株17株においてメチローム解析を行い、CIMP陰性・陽性モデルとなる細胞株を同定した。現在CIMP陰性・陽性モデル細胞株で、ヒストン修飾解析を実施している。
2: おおむね順調に進展している
CIMP陽性腎細胞がんで異常を来すヒストンメチルトランスフェラーゼ・ヒストンアセチルトランスフェラーゼ等のエピゲノム制御蛋白候補を同定し得たので、当初計画の通りに研究を進め得ると期待される。
CIMP陰性・CIMP陽性モデル腎がん細胞株において、平成25年度までに着目しているヒストンメチルトランスフェラーゼ・ヒストンアセチルトランスフェラーゼの異常と、CIMPマーカー遺伝子等のヒストン修飾異常の関係を検討し、着目するエピゲノム制御蛋白がヒストン修飾異常の責任蛋白となるか検証する。着目しているヒストンメチルトランスフェラーゼ・ヒストンアセチルトランスフェラーゼの異常と、検証コホート腎細胞がんの臨床病理像との関係も詳細に検討する。以上により、多段階発がん過程においてDNAメチル化プロファイル異常に先行するヒストン修飾異常を生じさせる、分子機構の理解を進める。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 3件) 備考 (1件)
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