研究課題
本研究では、多数の組織検体の分子病理学的解析をもとに、多段階発がん早期の前がん状態において、エピゲノム異常を惹起する分子機構の理解を進めることを目的とする。腎組織検体で実施したゲノム網羅的DNAメチル化解析 (メチローム解析)で、前がん段階においてcancer-prone のDNAメチル化プロファイルが既に確立し、臨床病理学的に悪性度の高いがんを生じ、予後不良であるような腎細胞がんのCpGアイランドメチル化形質 (CIMP)陽性群を同定した。腎細胞がん固有のCIMPマーカー遺伝子も同定し、CIMP診断基準を開発した。CIMP陽性腎細胞がんでエクソーム・トランスクリプトーム・プロテオームの異常が蓄積する分子経路には、ヒストンメチル化酵素SETD2・ヒストン脱メチル化酵素KDM5C・ヒストンアセチル化酵素NCOA1といったエピゲノム制御蛋白が含まれることが分かった。肝細胞がんに対する前がん段階と認識される慢性肝炎・肝硬変症において、正常肝細胞に比してDNAメチル化異常を示し、その異常が肝細胞がんに継承されるような遺伝子ならびに染色体領域のヒストン修飾パターンを、ChIP-シークエンス法によって解析した。ゲノム全体を概観すると、B型肝炎ウイルス感染陽性症例ではヒストン修飾パターンは正常肝細胞に概ね類似し、C型肝炎ウイルス感染陽性症例では正常肝細胞に比してH3K27トリメチル化修飾が目立っていた。これに対し、肝多段階発がんに継続して寄与するDNAメチル化異常を示す領域に限定して見ると、B型・C型肝炎ウイルス感染陽性症例とも、H3K4トリメチル化修飾・H3K27アセチル化修飾がDNAメチル化異常に先行していた。諸臓器の前がん段階において、ヒストンメチル化酵素・ヒストンアセチル化酵素の異常等を介してヒストン修飾異常が生じ、これらのエピゲノム異常がDNAメチル化によって固定され、がんに継承されてがんの悪性度を規定すると考えられた。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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