研究課題
メタボローム手法を用いて栄養型から嚢子への細胞分化の過程で起こる代謝産物の量的変化を解明した。代謝産物の定性と定量はキャピラリー電気泳動飛行時間計測型質量分析器(Capillary electrophoresis-Time of Flight Mass Spectrometry)を用いた。細胞分化誘導培地でヘビアメーバを培養することにより嚢子化を誘導し、0.5-128時間後の代謝産物プロファイルの変動を追跡した。エネルギー代謝に関連した解糖・発酵・アミノ酸代謝に大きな変化が見られた。更に、キチンの合成経路、ポリアミンの代謝経路に関与する中間代謝物に大きな変化が観察された。誘導後速やかに、解糖経路・発酵が止まり、代謝の流れが嚢子壁合成に誘導されるていた。更に、これまで存在しないと考えられていたポリアミン代謝が証明された。また、バリン・イソロイシンなどから脱炭酸により嚢子化初期にアミンが合成されることが初めて示された。本成果は国際誌に掲載された。現在、ポリアミンの合成経路の構成酵素を生化学的手法で解明している。
2: おおむね順調に進展している
当初目的としているオミクス解析による統合的な代謝調節機構の解明に向けて順調に成果が積まれている。具体的な経路の証明や重要な酵素の生化学的解析・機能解析には時間がかかるため、三年次以降に成果発信されると期待される。
まず、嚢子化で誘導される代謝経路を詳細に解明したい。初-2年度の解析で示された嚢子化で誘導される代謝(ポリアミン、脱炭酸化アミノ酸)の生成を調節する酵素を同定し、組換えタンパク質として発現し、その生化学的性質を解明することを目指す。次に、初-2年度の解析で示された嚢子化過程で発現誘導される溶質輸送体の機能を解明する。特に、嚢子化初期に誘導されることが明らかにされたNaプロトン輸送体(NHE)に関して、無細胞合成系を用いてリポソーム上に組換えタンパク質を発現させ、基質特異性等生化学的性質を解明することを目指す。更に、ポリアミン代謝経路の機能を理解することを目的として、嚢子化で変化が示されているポリアミン代謝経路に関して、活性測定・フラックス解析により赤痢アメーバを用いてその存在を証明する。更に、ジーンサイレンス法により主要酵素遺伝子の抑制株を作成し、増殖・病原性などの表現型変化の観察を行う。また、嚢子化過程に上昇するバイオジェニクアミン合成酵素の同定と酵素学的解析、逆遺伝学的手法により解明することを目指す予定である。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 備考 (1件)
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http://www.nih.go.jp/niid/ja/from-para.html