本研究では、TSST-1のスーパー抗原活性以外の機能を実証し、黄色ブドウ球菌感染における役割を細胞レベル及び生体レベルで解明し、黄色ブドウ球菌と宿主の攻防メカニズムを解明することを目的とした。その目的に沿って、平成26年度は以下の検討を行った。 具体的には、これまでの研究でTSST-1がHeLa細胞においてautophagosomeの形成を阻害し、そのメカニズムについて検討してきた。そこで、黄色ブドウ球菌感染におけるオートファジーの役割を明らかにするために、主要な病原遺伝子を保有しない黄色ブドウ球菌Staphylococcus aureus RN4220株にtsst-1遺伝子あるいはスーパー抗原活性を欠損させたtsst-1 (mtsst-1)遺伝子を導入し過剰発現させた株を作製して検討を行ったところ、以下の結果を得た。 1.これらの株をHeLa細胞に感染させた場合、RN4220野生株感染に比べ、tsst-1過剰発現株(RN4220/tst)とmtsst-1過剰発現株(RN4220/mtst)はともに、autophagosome数は減少していた。 2.これらの株のHeLa細胞内での増殖を測定すると、RN4220野生株感染に比べ、RN4220/tstとRN4220/mtstはともに、細胞内での増殖が低下していた。 これらの結果から、autophagosome数が多いほど増殖が高く、黄色ブドウ球菌にとってautophagosomeは増殖あるいは生存の場である可能性が示唆された。
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