1.感染動物モデルの咳嗽発作の観察データの収集 気管支敗血症菌と百日咳菌をそれぞれラットに感染させ、経日的にラット気道をを取り出し組織切片を作製して顕微鏡観察を行った。その結果、気管支敗血症菌の感染した気道組織では免疫細胞の浸潤が見られて明らかな炎症像を示したのに対し、百日咳感染の気道では明らかな細胞浸潤は認められなかった。今後、炎症の有無を生み出す細菌側の要因を調べる予定である。 2.咳嗽発作を起こさない ΔC株の変異遺伝子のクローニング 咳嗽発作を起こさない ΔC 株の種々の病原因子の発現状況を野生型のそれと比較した結果、前年度に同定した ΔC 株における変異遺伝子 cx は、種々の遺伝子の発現を制御する因子であることが推定できた。そこで cx を人為的に欠失させたΔcx 株を作製した。Δcx 株は ΔC 株と同様にラットに咳嗽発作を起こさなかった。次に cx 遺伝子の下流で発現制御を受け、かつ咳嗽発作に関与する遺伝子を探索するために、 Δcx 株と野生型株の遺伝子発現パターンをマイクロアレイによって比較した。任意に設定した基準に従って、野生型株で発現するが Δcx 株で発現しないと考えられた遺伝子を40遺伝子程度リストアップした。それぞれの遺伝子の欠損変異株をさらに作製し、現在、それぞれの咳嗽惹起能を調べているところである。
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