病原細菌のIV型分泌系は、病原因子を輸送するシステムとして、また接合伝達による多剤耐性菌出現を引き起こす主要な経路の一つとして、その全貌の解明が待望されている。細菌細胞表層に構築される複雑な超分子複合体であるIV型分泌系の全体像を解き明かすため、構造未知のIVB 型分泌系の中核複合体や部分複合体を生化学的に単離し、分子あるいは原子レベルでの構造解析を行う。これにより、多様な輸送活性を担い、その進化的な成り立ちが謎につつまれている IV 型分泌系の動作原理の解明を目指している。 本年度は昨年度までに得られたIVB型分泌系コア複合体について、構成タンパク質欠損株における部分複合体形成能を検討したところ、複数の構成タンパク質欠損株において部分複合体が形成されることを明らかにした。そのような部分複合体の解析から、構成タンパク質の位置情報に加えて、分泌系機能には必須ではないが分泌系形成に関わる構成タンパク質を同定することができた。これらの研究成果については、現在発表論文を投稿中である。さらに、より高解像度の電子顕微鏡解析および結晶構造解析に向けて、精製度・収量を高める精製法の開発を行っており、現在単粒子解析が行える程度に収量を高めることに成功している。ネガティブ染色あるいはクライオ電顕による単粒子解析については、今後本研究のさらなる展開として、外部の専門家との共同研究により進めていく予定である。
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