研究課題
本研究では、抗ウイルス自然免疫誘導に必須な役割を担う細胞内ウイルスRNAセンサーRIG-I-like receptor(RLR)に注目し、RLRによるウイルスリボ核蛋白質複合体(RNP)認識の分子機構と、そこに存在する普遍性を明らかにすることにより、RLRを標的とした新規の抗ウイルス治療あるいは予防薬剤開発へとつながる知見を見いだすことを目的としている。前年度までに、RIG-IによるRNA認識をin vitro(試験管内)で再構成する実験系の構築を行い、リコンビナントRIG-Iと基質である人工RNAを、培養細胞抽出液の可溶性画分およびミトコンドリア画分とATP存在下で反応させることにより、下流の転写因子であるInterferon regulatory factor (IRF)-3の活性化の誘導を検出することに成功した。平成24年度は、構築したIn vitro再構成系の基質としてウイルスRNPを用いた検討を行うことで、より生理的なウイルス検知機構へアプローチする計画であり、モデルRNPとしてインフルエンザウイルス(IAV)の人工的なRNPを用いる計画であった。しかし、IAV RNPの調整において技術的な問題が生じたため、実施計画に遅延が生じることとなった。平成25年度には、繰り越した研究費を用いてIAV RNPの調整における至適条件の決定を行い、RIG-IによるIAV RNP認識の検討を開始するところまでのサンプル調整が完了した。その後、予定通りRNPを用いた検討を継続している。一方で、ウイルス感染細胞内でRIG-Iが形成する凝集体の機能解析を通じて、そこに関与する分子の同定を進めており、今後は、これらの知見を統合的に理解することによりRLRによるウイルス検知の分子機構を明らかにしてゆく計画である。
3: やや遅れている
(理由)in vitroでのRLRシグナル再構成系の確立に成功し、当初の計画であるウイルスRNPを用いた解析を進行させる予定であったが、RNP調整の至適反応条件の決定に技術的な問題が生じ、研究に遅延が生じた。従って、24年度の計画であるRNP認識に関与する制御分子の同定の解析へは進むことはできず、24年度配分予算を一部繰り越すと共に、25年度中の計画完了を目指した解析を行った。予定からの若干の遅れはあったものの、RNPの調整の条件検討を実行し、目的とするサンプル調整を完了し、それを用いた解析へと進行している。
これまでに調整を終わらせたRNPサンプルを用い、RLRによるシグナル活性化のin vitro再構成系に供することにより、ウイルスRNP認識のモデル実験系を確立する。それを用いることにより、RLRによるウイルスRNP認識に関与する制御分子の同定およびそこで働く分子メカニズム解明のための解析を加速する。一方で、RLRが形成する細胞内凝集体の構成分子の同定についての検討も平行して行っており、それらの成果と連携することにより、RLRによるウイルス認識の理解を深める。
すべて 2013 2012 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 3件) 備考 (1件)
PLoS One
巻: 8 ページ: e53578
10.1371/journal.pone.0053578
巻: 7 ページ: e43031
10.1371/journal.pone.0043031
Hepatology
巻: 57 ページ: 46-58
10.1002/hep.26017
巻: 7 ページ: e45136
10.1371/journal.pone.0045136
Bichem Biophys Res Commun
巻: 428 ページ: 494-499
10.1016/j.bbrc.2012.10.079
http://www.pf.chiba-u.ac.jp/bunya_kansenmeneki/bunya_kansenmeneki/Mol._Immunol._jpn.html