研究課題
我々は、ヘルペスウイルスのエンベロープ分子と宿主分子との相互作用を研究することにより、Paired immunoglobulin like-type 2 receptor (PILR) αやMyelin associated glycoprotein (MAG, Siglec 4)といった細胞表面分子が、単純ヘルペスウイルスや水痘帯状疱疹ウイルスのGlycoprotein B (gB)と会合し、ウイルス感染時の膜融合に重要な役割を担っていることを明らかにしてきた。特に、gBは全てのヘルペスウイルス属のウイルスに保存されており、ウイルス感染時の膜融合に重要な役割を担うgBのレセプターとしてPILRαやMAGを同定したことは、ヘルペスウイルスの感染機構を解明する上で非常に重要な発見である。そこで、本研究では、PILRαやMAGを介したウイルス感染時の膜融合の分子機構を解明すると共に、様々なヘルペスウイルスの細胞内侵入におけるこれらのレセプターの機能を明らかにすることにより、ウイルスの感染メカニズムを解明することを目的にした。さらに、PILRαやMAGとgBとの相互作用を構造生物学的に解析することによって、ウイルス侵入分子メカニズムや新たな制御方法の開発を目指して研究を進めた。特に、gBと会合するPILRの構造解析、gB-PILR相互作用機序の解明、水痘帯状疱疹ウイルスやHHV-6の感染機構の解明等を実施した。その結果、PILRの構造解析に成功したとともに、PILRと結合する特定の糖鎖構造の同定に成功した(投稿中)。また、水痘帯状疱疹ウイルスと会合するMAGとの相互作用から、宿主細胞の糖鎖構造が水痘帯状疱疹ウイルスの感受性に影響を与えることを明らかにした。また、HHV-6の膜融合機構を解析することによって、初めて膜融合に関わるエンベロープ分子を明らかにすることに成功した。
2: おおむね順調に進展している
ヘルペスウイルスのgBと会合するPILRの認識に関わる糖鎖構造を明らかにした他、水痘帯状疱疹ウイルスの感染感受性に関与する分子機構を明らかにした。また、HHV-6の膜融合機構を明らかにした。
今後、単純ヘルペスウイルスや水痘帯状疱疹ウイルスばかりでなく、HHV-6等の他のヘルペスウイルスの解析を進めることによって、様々なヘルペスウイルスの感染に関わる重要な分子機構が解明できるようになることが期待される。
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