研究課題
エイズウイルス複製の制御維持機序を知ることを目的とし、サルエイズモデルを用い、ワクチン接種・サル免疫不全ウイルス(SIV)チャレンジ実験でSIV複製が制御された個体群のウイルス学的および免疫学的解析を行った。解析には、これまでの実験で長期SIV複製制御に至ったMHC-Iハプロタイプ90-120-Ia共有群10頭の凍結サンプルを用いた。これらは血漿中ウイルスゲノムが検出限界以下の個体であり、血漿サンプルよりのウイルスゲノムcDNA増幅が困難であるため、凍結リンパ球サンプルよりのプロウイルス増幅を試みた。リンパ球より抽出したゲノムDNAよりのプロウイルスDNA増幅は困難であったが、IL7-IL15存在下における培養後のリンパ球のゲノムDNAよりnested PCRにてプロウイルスDNAの増幅が可能となり、長期SIV複製制御群のウイルスゲノム塩基配列解析に初めて成功した。SIVゲノムの各蛋白をコードする領域の塩基配列解析により、新しい知見として、これらのSIV複製制御群は、変異蓄積が認められる群(第I群:5頭)と変異がほとんど認められない群(第II群:5頭)とに大別されることが明らかとなった。90-120-Ia共有群はSIV感染初期には、主にGag-Nef抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)反応の優位な誘導を示した。特に、強いGag206-216エピトープおよびGag241-249エピトープ特異的CTL,反応を示し、変異蓄積を認める第1群ではこれらのCTLからの逃避変異が選択されていた。一方、第II群ではこれらのCTL,逃避変異は認められなかった。これら両群の抗原特異的CTL反応の比較により、HIV/SIV複製の制御維持機序の解明に結びつくことが期待される。
2: おおむね順調に進展している
長期SIV複製制御群からのウイルスゲノムcDNAの増幅およびその塩基配列解析は技術的に容易ではないと予想されたが、IL7-IL5存在下における培養後のリンパ球のゲノムDNAよりnested PCRにてプロウイルスDNAの増幅が可能となり、長期SIV複製制御群のウイルスゲノム塩基配列解析に初めて成功した。
長期SIV複製制御群は、変異蓄積が認められる群(第I群)と変異がほとんど認められない群(第II群)とに大別されるという極めて興味深い新知見が得られたことから、これら両群の抗原特異的CTL反応の比較検討を中心に研究を推進する計画である。また、近年、プロウイルスの宿主染色体組込み部位の網羅的解析法が開発されたことから、この手法を用いてSIV複製制御へのプロウイルス組込み部位の関与についての解析を進めることを検討中である。
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