研究課題/領域番号 |
23390115
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
俣野 哲朗 国立感染症研究所, エイズ研究センター, センター長 (00270653)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ウイルス / 感染症 / 微生物 / 免疫学 / エイズ / 細胞傷害性Tリンパ球 / 変異 |
研究概要 |
エイズウイルス複製の制御維持機序を知ることを目的とし、サルエイズモデルを用い、ワクチン接種・サル免疫不全ウイルス(SIV)チャレンジ実験でSIV複製が2年間以上の長期にわたり制御された個体群のウイルス学的および免疫学的解析を推進した。H24年度はGag206-216あるいはGag241-249エピトープ特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)反応を選択的に誘導するワクチンを接種した7頭の凍結サンプルを用い詳細な解析を進めた。H23年度に樹立した手法を用い、凍結リンパ球サンプル由来のプロウイルスのgag塩基配列解析を行ったところ、感染後2年目にCTL逃避変異蓄積が認められる第I群と変異が認められない第II群に分かれることが確認された。さらに感染後1年目のプロウイルスgagの塩基配列解析を行ったところ、両群とも変異が認められないことが判明した。つまり、SIV慢性持続感染では感染後1年で多数の変異蓄積が認められるのに対し、長期SIV複製制御群では、感染後1年で変異選択が認められず、CTL逃避変異選択が抑えられていることが明らかとなった。しかし第I群では、感染後1年から2年の間に変異蓄積が認められたことから、この群でのSIV複製制御が一部破綻してきていると考えられた。感染後2年のGagエピトープ特異的CTL反応の解析結果は、第I群でこれらのCTL反応が認められなくなる傾向を示し、CTL逃避変異蓄積を反映していると考えられた。90-120-Ia共有群は、SIV感染初期にはGag・Nef抗原特異的CTL反応の優位な誘導を示すが、第I群では感染1年目にGag・Nef抗原だけでなくGag・Nef以外の抗原も標的とする広汎なCTL反応を示した。このCTL標的の広範化は、HIV・SIV複製制御破綻徴候を示す指標として重要であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H23年度に樹立した手法を用い、長期SIV複製制御群のプロウイルスゲノム塩基配列解析が進展した。さらに、CTL標的の広範化がHIV・SIV複製制御破綻徴候を示す指標となるという新規性の高い知見を得た。この知見獲得は、学術的に重要な成果である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究にて、長期SIV複製制御群は、変異蓄積が認められる群(第I群)と変異がほとんど認められない群(第II群)とに大別されるという極めて興味深い新知見が得られ、両群におけるCTL反応の差異を示す結果も得たことから、これら両群の抗原特異的CTL反応のさらに詳細な比較検討を中心に研究を推進する計画である。
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