研究課題
基盤研究(B)
エンテロウイルス71(EV71)は通常手足口病の原因となるが、近年アジアを中心に流行し、乳幼児に急性脳炎を引き起こしを大きな問題となっている。このウイルスの神経病原性発現機構の分子基盤を明らかにするために、EV71はEV71受容体であるScavenger receptor B2(SCARB2)を発現するマウスを作成して、EV71の神経毒力を測定する動物モデルを確立し、そのモデルを用いてウイルスの病原性の強弱を決定する分子機構を明らかにする。本年はSCARB2マウスモデルの確立を行った。現在までの結果でEV71の個体への感染、特に神経細胞への感染に最も重要な受容体はSCARB2であると考えられる。ヒトSCARB2遺伝子全長を含むBACクローンをトランスジーンとしたトランスジェニック(tg)マウスの作製を行った。またヒトSCARB2タンパクのexon 4をマウスScarb2 exon 4と置換するとキメラSCARB2はヒトと同等の感染が成立することから、exon4領域をヒト型に置換したノックインマウスの作製を行った。tgマウスは6系統が樹立され、どの系統もウイルスの脳内接種により、ヒトと同様な中枢神経系の病変が観察された。tgマウスは現在までのところ経口感染の成立が確かめられていないが、脳内接種の他、腹腔内接種、静脈内接種によりヒトと同様な病態を示すことが判明している。ノックインマウスは置換により正常なスプライシングが妨げられ、期待したキメラタンパクが正確に作られず、高いウイルス感受性を得ることができなかった。今後はtgマウスがより期待できるので、tgマウスモデルを用いて実験を継続する。
2: おおむね順調に進展している
ヒトSCARB2遺伝子の導入によりマウスはEV71感受性を獲得することが明らかになった。このマウスモデルを用いて次年度以降の研究を進展させることが可能である。
さまざまな分離株をマウスモデルに感染させ、強毒株と弱毒株を同定する。両者の比較、組換えウイルスの作製を行い、ウイルスの神経病原性を決定している遺伝情報を明らかにする。
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