研究概要 |
申請者らは,計画していたボノボ,オランウータン,ゴリラ,テナガザルのインターフェロンラムダ(IFN-λ)領域のゲノムシークエンスを完了させた.部分的に解析結果では,今まで正確に解読されておらず不明となっていたこれらのサルのIFN-λ遺伝子を同定することが出来た.現在はその詳細な遺伝子多型解析と種間の比較ゲノム解析を進めている. 前年度でIFN-λ3蛋白特異的な抗体を用いたCLEIAを開発したため,それを臨床検体に応用してその有用性を検証した.C型慢性肝炎患者のIFN-α治療の効果を予測する因子として,IFN-λ3の発現量を指標として検討を行った.患者の末梢血単核球を分離し,TLR7刺激を加えたのちにCLEIAでの定量を実施した.その結果,ウイルス排除に至る治療成功群では,末梢血単核球が発現するIFN-λ3量が治療不良群に比べて有意に高値であった.また,先に報告した遺伝子多型(rs8099917)の遺伝子型で判定するよりも高確率に予後の予測が可能であった.このことから,遺伝子の最終産物である蛋白をモニターすることでより良い判定が可能であると考えられた. IFN-λ3の発現量を規定する多型としてTAの繰り返し配列(rs72258881)を報告した。この効果を臨床的に検証するために,全国の共同研究施設からデータを集めてTAの多型を解析した.現在,日本人1000例,アメリカコホート検体300例,エジプト検体100例のデータを得て人種差とC型慢性肝炎での治療と病態への関連を解析している. マイクロアレイ解析により,IFN-λの発現誘導をかけてからの2時間おきの経時的な遺伝子変動データを取得した.その中で,誘導に関わると考えられる時期に発現する遺伝子と発現抑制に関連すると考えられる時期に変動する遺伝子を同定した.現在,その機能について細胞レベルでの解析を進めている.
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今後の研究の推進方策 |
本年度では,今後の解析に用いる実験データや臨床データを多数取得することができたため,来年度では,その解析を進めてデータのまとめを行う.その中で,IFN-λ3とC型慢性肝炎の関連についてさらに明らかにできると期待できる.
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