(1)EBV潜伏感染からの再活性化の分子機構: EBV再活性化のトリガーであるBZLF1蛋白質の発現は転写の段階で制御されている。BZLF1プロモーターを強力に活性化する転写コアクチベーター、および、逆に抑制するコリプレッサーによるBZLF1プロモーター制御の分子メカニズムとBZLF1プロモーター周辺のヒストン蛋白質のメチル化、アセチル化の状態のエピジェネティックな変化を明らかにする事を目的とした。宿主細胞にコードされているb-Zip型転写抑制因子c-Jun dimerization protein 2 (JDP2)が、BZLF1プロモーターに結合し、BZLF1の転写を抑制することでウイルスの再活性化を抑制し、潜伏感染の維持に貢献していることを見いだした。潜伏状態においてBZLF1 プロモーター周辺はヒストンH3K9me2/3、H3K27me3、H4K20me3などの抑制性の修飾が顕著であり、再活性化を誘導するとヒストンアセチル化、H3K4me3などの活性化の指標である修飾マーカーが亢進した。 (2)ウイルス複製工場(RC)の構造解析:これまでの研究で、EBV溶解感染の際には、replication compartment (RC) と呼ばれる核内の局在した部位にウイルス由来の複製タンパクや宿主タンパクがリクルートされ、複製の場となっていることがわかっている。我々はEBVカプシド形成に関して、以下に示す新しいモデルを提案した。1)EBVのプロカプシドの組み立てはBMRF1-coreの局在とは無関係に起こる。2)組み立てられたEBVプロカプシドはBMRF1-coreの内部のウイルスDNA貯蔵の場に輸送される。3)ウイルスDNAの貯蔵の場でプロカプシド内にウイルスDNAがパッケージングされ、成熟したカプシド粒子ができる。
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