研究概要 |
抗ウイルスの宿主制御応答は急性期のインターフェロン(IFN)シグナルとその後の細胞性免疫の起動が特に重要である。近年核酸パターン認識レセプター(PRR)と複数のシグナル系がIRF の活性化に連動することが示され、ウイルスによるtype I IFNの誘導機構が解明の途についた。しかし、ウイルスRNAの初期認識機構、ウイルス感染が樹状細胞(mDC)を介してNK細胞・CTLを起動する機構は明らかでない。本研究では種々のマウスモデル(HCV, HBV, PV, MV)を使って各種RNAウイルス抑制に有効なIFN応答、NK, T細胞免疫の起動に必要な樹状細胞活性化経路を同定し、抗ウイルス応答を分子機構として解明することを目指す。 HCVについてはマウスモデル系が完成に至らず、細胞培養系を新たに作製・確立した(PLoS ONE 2011)。マウス肝細胞にIPS-1 KO, MyD88 KO, TICAM-1 KO, IRF-3/7 KOなどを導入してレプリコン複製時・感染時に各種エフェクターがそれぞれどの様に誘導されるかを査定した。Genechip, Lentivector の遺伝子導入系、siRNAなどを用いて、エフェクター誘導の鍵となる(樹状細胞の)分子を同定した。IFN-inducing genes に新規遺伝子を加えて、樹状細胞MyD88 とCTL誘導、TICAM-1とNK活性化、IPS-1 のエフェクター誘導の意義を指向するような分子を網羅的に抽出した。IRF-3/7依存性・非依存性の抗ウイルス機構についても検討する。
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今後の研究の推進方策 |
MAVS依存性経路の重要性はウイルスごとに異なると推測される。MAVS経路の意義は急性感染のIFN応答にあるので、以下の実験を組む。多彩な抗ウイルス免疫応答の分子機構解明のためにIFNAR KOマウス背景でMAVSによって誘導される諸分子をgenechip、databaseから抽出する。これらからIRF-3/7依存性とIRF-3/7非依存性(無関係)に誘導される分子を拾ってloss-of-function, gain-of-function の実験を樹状細胞で行う。従来の提案、TICAM-1で誘導され、MAVSで誘導され難いエフェクター誘導の原因遺伝子の抽出も並行して行う。ウイルスによってエフェクターの種類別誘導にIRF-1, -3, -7 などの使い分けがあるとの傍証があり、この点も検討して行く。
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