研究概要 |
抗ウイルスの宿主制御応答は急性期のインターフェロン(IFN)とその後の細胞性免疫の起動が特に重要である。近年核酸パターン認識レセプター(PRR)と複数のシグナル系がIRF の活性化に連動することが示され、ウイルスによるtype I IFNの誘導機構が解明の途についた。しかし、ウイルスRNAの初期認識機構、ウイルス感染が樹状細胞(DC)を介してNK細胞・CTLを起動する機構は明らかでない。本研究では種々のマウスモデル(HCV, HBV, PV, MV)を使って各種RNAウイルス抑制に有効なIFN応答、NK, T細胞免疫の起動に必要な樹状細胞活性化経路を同定し、抗ウイルス応答を分子機構として解明する。本年度はウイルス感染とRNAによるエフェクター誘導機構を主に解析した。 Genechip, siRNAなどを用いて、エフェクター誘導の鍵となる(樹状細胞の)候補分子を20余り同定した。これらをLentivector に組み込んで樹状細胞(TICAM-1 orIRF-3欠損)に発現させ、CTL誘導、NK活性化、IFN-β誘導を査定した。TICAM-1で誘導され、IPS-1 で誘導され難いエフェクター誘導の原因遺伝子をいくつか抽出した。これらをsiRNAでWT 樹状細胞から落して重要性を確認している。 一方、MAVS 依存性でIRF-3/7非依存性の抗ウイルス発動分子も同じdatabaseから抽出した。これはIFNAR KOマウス背景でMAVSによって誘導される分子としたが、殆どがIFNAR KOマウス樹状細胞でIFN誘導性遺伝子と重複したため、IFN-inducible genes からNK細胞活性化に関与する膜分子, CTL誘導の細胞内分子として抽出し直した。これらを使ってloss-of-function, gain-of-function の実験を樹状細胞で行っている。
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今後の研究の推進方策 |
各種ウイルス感染マウスモデルを用いて樹状細胞、免疫系の感染による変調を解析する。RNAウイルスは種類によって異なる転機を取る。これにウイルスRNAゲノムの差異が影響するかを分子論的に解明する。NK, CTL誘導への影響のウイルスごとの違いや持続感染の起動などもRNA構造の相違で説明できるかも検討したい。麻疹ウイルスではDCが初期感染のリザバーであるが(PLoS Pathog.投稿中)、ポリオウイルスではTICAM-1経路が鍵になる(J Immunol 2012)。HCVではDCに直接感染は無いがRNAの2次貪食がDC成熟化を引き起こす。これらの治験をモデル系で解析中である。 従来、MAVS依存性経路が初期ウイルス感染の鎮圧のために必須である、とされてきた(Kato et al., Nature 2006)が、各種RNAウイルスを深く検討すると、ウイルスごとの宿主応答は一元的に決まるものではない。IFN誘導経路の多様性に応じてウイルスの免疫応答も多彩であることを証明する。
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