本研究は,アクティブ型電子タグとジャイロセンサーの組み合わせにより,患者の体位や行動などの状態を位置情報と合わせてリアルタイムに検出・分析し,医療安全の向上や,客観的なデータに基づく患者管理・指導に役立てる事を目的とする.本年度の研究では,3軸加速度センサーとジャイロセンサーを内蔵したタグ,および,3軸加速度センサーと心電計を内蔵したタグを用い,各々の性能評価を行った上で,入院患者のデータを各々50Hz,256Hzのサンプリング間隔で取得し,分析した.全身17箇所にタグを装着し,部位別のデータを解析するとともに,患者自身に記録してもらった行動記録との突合を行い,動作の検出能を評価した.その結果,患者の動作や状態検知に対し,各種センサーを内蔵したタグは十分有効であることが分かったものの,装着部位については目的に応じて適切に選択する必要がある.本研究では,入手できたタグの関係で位置情報を同時に取得することはできなかったが,通信手段を有するアクティブ型電子タグの位置情報を取得する方法は既にいくつか確立されていることから,実現は困難ではないと思われる.ただし,今回使用したタグのうち前者は若干サイズが大きく,患者にとっては装着しているストレスがあった.後者は,縦横は前者とほぼ同等だが奥行が薄いため,それほどのストレスはなかったようで,実医療に応用する際,筐体のサイズや形態も重要な要素と考えられた. アクティブ型電子タグは位置情報管理にも利用され,医療機関業務においてもトレーサビリティの確保など様々な場面で有効だが,医療安全に関し真に効果的に活用するには患者の状態を的確に検知し,位置情報と組み合わせて活用できることが重要である.ユビキタス関連技術や各種センサー技術の融合活用は,医療安全の向上や,患者管理・指導の質的向上と言った社会的課題に応える可能性を十分に持っていると考える.
|