研究課題/領域番号 |
23390137
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究分野 |
医療社会学
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
下妻 晃二郎 立命館大学, 生命科学部, 教授 (00248254)
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研究分担者 |
白岩 健 立命館大学, 生命科学部, 助教 (20583090)
福田 敬 国立保健医療科学院, 研究情報支援研究センター, 上席主任研究官 (40272421)
池田 俊也 国際医療福祉大学, 薬学部, 教授 (90193200)
後藤 玲子 立命館大学, 先端総合学術研究科, 教授 (70272771)
坂巻 弘之 名城大学, 薬学部, 教授 (40317334)
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キーワード | 医療資源配分 / 医療経済評価 / 医療技術評価 / 衡平性 / 生産性費用 / 非関連医療費 / 割引き率 / 閾値 |
研究概要 |
研究グループを下記の2つのブロック、計4グループに分け、課題を検討した。 1.経済学的・倫理学的課題 (1)倫理グループ 医療資源配分の指標としてよく利用されているcost/QALYを用いる利点は、あらゆる医療技術の評価が横断的に可能になることであり、欠点は、すべての医療技術においてQALYは等価であるとは限らないことである。 Cost/QALYによる資源配分の衡平性確保のための理論としては、次のようなものが提案されている。(1)Disease burdenによる調整:重症者により重く配分。重症者の判定方法が課題。(2)Fair innings rule:若年者により多くの資源を配分。「獲得するQALY」の平等性を重んじる。高齢者差別に繋がりかねないことが課題。(3)Rule of rescue(救命原則):致死的な疾患の救命に多く医療資源を配分。直感的に受け入れやすい。(4)Proportional short fall:(獲得できるQALY)/(元気であれば期待余命で獲得できるQALY)で重みづけをする方法。上記の多くは閾値で調整。 2.医療経済評価の技術的課題 (1)費用グループ 医療の資源配分においては、分析の立場としては、「支払者の立場」あるいは「限定的な社会的立場」を用いることが望ましい。後者の立場で分析をする場合に、生産性費用と時間費用の扱いが課題であった。 (2)非関連費用グループ 予防医療など、長期の延命効果が期待できる場合、非関連医療費を含めると結果が大きく変わる可能性がある。非関連医療費は一般に推計が難しく不確実性が大きいので、入れると本来分析すべき医療技術の費用や関連疾患の医療費の変動が埋没してしまう可能性がある。 (3)割引率グループ 米国ワシントンパネルでは費用・効果ともに年率3%が推奨され、英国NICEでは2004年より年率3.5%が用いられている。近年、健康アウトカムを費用より低率で割引くべきとの議論がなされ、オランダでは費用を4%、アウトカムを1.5%で割り引いている。また、英国とフランスでは30年以上の推計の場合に、割引率を逓減する案も提示されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海外調査は十分にできなかったが、理論的基盤の研究については予想以上に成果が上がった。 従って、全体としては、おおむね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
1.欧州およびアジア各国の医療資源配分方法の詳細と、その理論的基盤の概要を明らかにする。 2.英国などで用いられてきた厚生経済学に基づく資源配分方法の利点・欠点を明らかにし、その改良版の提案や、非帰結的・非厚生主義的観点からの新たな資源配分方法を提案する。 3. 2.に基づいて、具体的な評価指標や評価方法を開発する。 4.医療経済学において、研究者の間でも合意を得ていない方法論上の課題について、実証に基づくコンセンサスを確立する。 5.高額な新規抗がん剤などを題材とした技術評価のモデル研究を行う中で、従来の方法と新たに提案する方法の結果の比較シミュレーションを行う。
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