研究概要 |
種々薬物トランスポータの構造・機能解析が進められ、個々の薬物動態学的意義が明らかにされつつあるが、薬物トランスポータ基質の体内動態特性が個体レベルで異なる例も多く見受けられる。また、薬物トランスポータの内因性基質が見いだされ、生理学的にも重要な役割を果たしている例も報告されている。本研究では、腎薬剤排出系の薬物動態学的、生理学的意義を解明し、新薬開発における基礎的情報の提供や生体の恒常性維持機構を明確にすることを目的として検討を進めた。 Mate1ノックアウトマウスを用いて、抗アレルギー薬フェキソフェナジンの体内動態解析を実施したところ、MATEの輸送基質であるにも関わらず、フェキソフェナジンの血中濃度推移や尿中排泄には野生型マウスとノックアウトマウスで差が認められず、フェキソフェナジンの尿細管分泌にはMATEがほとんど寄与していないことを明らかにした。また、ヒト腎臓におけるMATEの局在を免疫組織化学的手法により検討し、MATEと血管側のOCT2, OAT1, OAT3が同じ近位尿細管セグメントに発現していることを明確にし、血管側のOCT2, OAT1, OAT3と管腔側のMATEが協働して薬物の尿細管分泌を担っていることを示した。さらに、東京大学杉山名誉教授、楠原教授等との共同研究により、メタボローム解析の結果から、チアミンがMATEの内因性基質であることを明らかにし、MATE機能のマーカーとして有用であることを示した。
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