研究課題/領域番号 |
23390144
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研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
斎藤 嘉朗 国立医薬品食品衛生研究所, 医薬安全科学部, 部長 (50215571)
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研究分担者 |
黒瀬 光一 国立医薬品食品衛生研究所, 医薬安全科学部, 室長 (30280754)
石井 明子 国立医薬品食品衛生研究所, 生物薬品部, 室長 (50291117)
加藤 健 独立行政法人国立がん研究センター, 中央病院, 医員 (50501855)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 抗がん剤 / 副作用 |
研究概要 |
セツキシマブにより、インフュージョン(IF)反応を発現した、および発現しなかった患者臨床試料・情報の収集、及びこれを用いたインフュージョン反応に関連する遺伝子多型の探索、見いだされたFcγIIA受容体遺伝子(FCGR2A)多型の機能解析、およびin vitro インフュージョン反応予測系を用いた解析を継続した。具体的には、インフュージョン反応を起こしやすい患者側因子の同定を目的に、免疫細胞の活性化に関与するFc 受容体遺伝子FCGR1Aの多型解析をセツキシマブ投与患者ゲノムDNA32検体に対して行った。FCGR1Aのexon 6直近上流に5bp欠損のある検体が見出され、これはexon 6のD324N変異と連鎖していることが示唆された。また、別の抗体医薬品であるベバシズマブ投与患者105検体につきFCGR1Aの多型解析を行ったところ、上記欠失変異が23例見出され、全てがD324N変異を有しており、これら変異は連鎖していることが判明した。また、前年度に引き続きFCGR2Aに見出された遺伝子多型818T>C(L273P)が受容体機能に及ぼす影響について検討し、本多型はIgGとの結合能に影響を及ぼさない一方で、受容体架橋刺激に伴う受容体自身のリン酸化を亢進し、下流のシグナル伝達を活性化することを明らかにした。また、in vitroのインフュージョン反応予測系としてヒト末梢血単核球(PBMC)からのサイトカイン放出測定系を用い、過剰なサイトカイン放出を誘導することが報告されているTGN1412をはじめ10種類の抗体医薬品について18種類のサイトカイン放出能を検討した結果、PBMCにおける抗原発現の有無やIgGサブクラスの違いによって異なるサイトカイン誘導能を示す可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、1) 簡便で安定なin vitro予測系を構築し、インフュージョン反応を発現しやすい抗体医薬品の品質特性を明らかにすること、2) 発現頻度が高いセツキシマブによるインフュージョン反応の発現個体差予測系を構築すること、等を目的とする。二年度である平成24年度は、臨床試料の収集が遅延しているが、その類似性からゲノム解析が困難なFCGR1A遺伝子の多型解析を終了したこと、新規に見いだされたFCGR2A多型が機能変化を有し臨床上重要であることを示唆する結果を得たこと、in vitroインフュージョン反応予測系については、特性の異なる複数の抗体医薬品によるサイトカイン放出能の差異についてデータの蓄積が進んでおり、インフュージョン反応の発現に影響を与える抗体医薬品の品質特性に関する有用な知見が得られつつあることから、研究は概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる平成25年度は、インフュージョン反応に関し、これまでに集積した遺伝子多型解析結果および患者背景因子等の情報を用いて、セツキシマブによるインフュージョン反応発現の個体差予測モデルを確立することを目標とする。また、in vitroのインフュージョン反応予測系については、前年度にサイトカイン放出能が異なることを明らかにした抗体医薬品群を対象とし、サイトカイン放出に関与するリンパ球サブセットおよび受容体を明らかにすることで、インフュージョン反応発現の分子メカニズム解析を実施する。また、ヒト培養細胞株を用いた安定なin vitro予測系の構築を試みる。
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