研究課題/領域番号 |
23390145
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研究機関 | 独立行政法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
池田 智明 独立行政法人国立循環器病研究センター, 病院, 客員部長 (80202894)
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研究分担者 |
山原 研一 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (50450888)
犬伏 正幸 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (70399830)
大谷 健太郎 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 研究員 (50470191)
大嶌 麻妃子 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 研究員 (50637527)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 間葉系幹細胞 / 胎児付属物 / 卵膜 / 細胞シート / 他家移植 / 心筋梗塞 |
研究概要 |
卵膜由来の間葉系幹細胞(MSC; mesenchymal stem cell)分類法、細胞純化および誘導法を開発し、様々な疾患に対応した最適な細胞移植療法を確立することを目的とする。卵膜中のMSCは間葉系の多様な前駆細胞を含んでおり、MSC移植療法が有効な疾患は幅広い。卵膜由来MSC移植療法の治療効果を高めるために、血管や心筋への高分化能を有する、慢性心不全に対応した卵膜由来MSC-高分化誘導シートを開発し、動物モデルを用いて有効性・安全性を検討するために以下の実験を行った。 1)妊娠15日目のSDラットから卵膜を採取し、MSCを分離・培養した。得られた細胞は、脂肪細胞、骨芽細胞、軟骨細胞への多分化能を有しており、フローサイトメトリーによる表面抗原の解析ではMSCとしての定義を満たしていた。温度応答性培養皿を用い、卵膜由来MSCシートを作製し、さらに2層に積層化したものを移植に用いた。Lewisラットの左前下行肢を完全結紮し心筋梗塞モデルラットを作製した。モデル作製4週間後、エコー評価にて心機能低下が見られたラットに対して卵膜由来MSCシートを移植した。移植4週間後、卵膜由来MSCシート移植群でコントロール群と比較して有意な線維化抑制効果と心機能改善効果が得られた。移植部位において毛細血管密度の増加も確認された。結果より、心筋梗塞に対する卵膜由来MSCシート移植療法の有効性が示唆された。しかし、移植4週間後に移植卵膜MSCの生着が確認されたが、生着細胞数はわずかであり、心筋細胞への分化は確認されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は研究実施計画に沿い、以下の実験を行った。 【卵膜MSCの分類】ヒト卵膜(羊膜+絨毛膜)に関し、表面抗原解析を行ったところ、①羊膜の酵素処理により、上皮細胞とMSCが混在すること、②絨毛膜の酵素処理により、MSCの代表的表面マーカーCD90の発現に差異のある細胞集団が複数存在すること、が明らかとなった。 【各種疾患モデルにおける卵膜MSC移植による治療効果解析】卵膜MSCラット自己免疫性心筋炎・肺高血圧症・および腎虚血再灌流モデルにおいて、卵膜由来MSCの他家移植は改善効果を有することを証明し、その治療効果の程度は、投与細胞の種類、投与時期、投与量、投与経路により異なることを明らかにした。一方、移植した細胞の生着率は低く、より著明な治療効果を得るには繰り返し移植など、何らかの改善が必要と考えられた。今後は、さらに治療効果を高めるための検討を計画している。 【分離・培養法の樹立】 ヒト卵膜MSCの細胞製剤化を見据え、分離培養技術の標準化を目指した。特に工程の簡素化に向け、様々な工夫を凝らし、常に一定数以上かつ均一なMSCを培養することに成功した(特許準備中)。 このように、今年度の研究実施計画に基づき、順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
卵膜由来MSCの各種難治性疾患に対する治療効果を高めるための研究を行う。卵膜は構造上羊膜および絨毛膜からなるが、絨毛膜MSCが表面抗原解析にてもheterogeneousな細胞集団であることが明らかとなり、シンプル且つ単一な細胞集団に分類するための方法を検索する。また、得られた卵膜由来MSCを用いて、従来の分離法で得られた細胞との分化効率や治療効果について比較検討を行うことを計画している。 次年度の研究費の使用計画 卵膜由来MSCの高純度簡便分離法を開発し、動物実験において分離細胞を用いた有効性に関する研究を予定している。培養試薬・機材(メディウム、培養皿)をはじめ、遺伝子解析用試薬や実験動物にも研究費の使用を計画している。
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