研究課題
1.可溶性チロシンキナーゼFERの過剰発現と非小細胞肺がんにおける予後不良マーカーおよび治療標的となる可能性の実証原発性肺がんにおいて,ALK遺伝子のチロシンキナーゼと相同性の高い30のチロシンキナーゼについて,30症例の腺がん(EGFR変異なし,KRAS変異なし)について定量的RT-PCRを行った.その中で,3例で過剰発現を認めたFER遺伝子について,遺伝子機能解析および,臨床病理的解析を行った.FER遺伝子はがん遺伝子FES/FPSとサブファミリーを構成し,マウス線維芽細胞NIH-3T3に導入したところ,形質転換を認めた.NCI-H661細胞でFERの過剰発現を認めたため,ヘアピンsiRNAベクターを構築して,FERの発現を抑制した.FERはタンパクレベルでの発現抑制が確認され,FERの発現抑制によりNCI-H661細胞はアポトーシスに至った.,FERの発現について肺がん治癒切除症例135例について検討したところ,15例でFERの過剰発現を認め,無再発予後期間,生存期間いずれも予後不良であった.これらの結果について,アメリカ癌研究学会およびヨーロッパ癌機構のカンファレンスで報告し,論文発表を行った.2.チロシンキナーゼRETの過剰発現と非小細胞がんにおける予後マーカーとしての確立上述のスクリーニングから2例でチロシンキナーゼRETの過剰発現が認められた.RETはすでに甲状腺髄様がんでがん遺伝子として報告があり,vandetanibという阻害薬が知られており,その臨床病理学的解析を行った.81症例の検討において検討を子なったところ26例で過剰発現を認めた.EGFR変異の認められた症例におけるサブセット解析では,RET過剰発現は統計的有意な予後不良因子であった.これらの結果をアメリカ癌研究学会およびヨーロッパ癌機構のカンファレンスで報告した.
2: おおむね順調に進展している
これまでに2つのチロシンキナーゼの肺がんにおける予後不良マーカーを明らかにすることができた.FERについては,現在国内外の製薬企業との共同研究で阻害薬の開発へ進んでおり,過剰発現群では治療選択のためのマーカーとしても使用できる可能性が極めて高い.RETキナーゼの過剰発現については国内外の3グループから融合遺伝子の形成による発がん性が報告されているが,われわれの解析ではより多くの症例でRET遺伝子の過剰発現がみられ,されにEGFR変異例での予後不良が明らかになった.これは,RET過剰発現が今後肺がんにおけるスタンダードなマーカーとして利用されれば,RET過剰発現のあるEGFR変異例ではgefitinibやerlotinibのようなEGFR-TKIではなく,EGFR/VEGFR/RETの阻害薬であるvandetanibを用いるべきであることを示唆している.以上臨床的に非常に有意義な発見を報告することができたと考えている.
1.FERの過剰発現により活性化されるシグナルパスウェイの同定これまでにFERについては,細胞骨格分子cortactinのリン酸化が報告されているが,シグナルパスウェイにおける位置づけはほとんど明らかにされていない.今後はFERの治療標的としての妥当性を明らかにする上で,FER過剰発現が,細胞内でどのようなシグナルを発するかどうかを,過剰発現系におけるプロテオーム解析などを行うことで明らかにする予定である,2.RET過剰発現によるEGFR変異症例の予後不良の機構解明EGFR変異については,これまで細胞株でも解析が進んでおり,多くのEGFR-TKI感受性細胞が報告されている.これらの細胞株にRET遺伝子を導入してEGFR-TKIの感受性の変化など分子機構の解明を推進していく予定である.
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